欅の宿り木

□欅の宿り木 5話 前編
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季節は完全に冬になり、イルミネーションが街を彩って皆がソワソワとするイベントがある前夜、名の両親は用事があると出掛けてしまった。




家族にとって重要なイベントだという認識らしく、両親からは何度も謝られて一緒に行こうと誘われたが名は特に意識していないので2人でゆっくりして来て欲しいと送り出した。





夕飯の後、静かになった部屋で微睡んでいる内に眠ってしまうと携帯が枕元で鳴り、寝ぼけながら電話を取ると友梨奈の声がする。




「どうも、お久しぶりです…欅坂46の平手です…」




「……あー……はい?……」



何故か、友梨奈は敬語。




そして、恐ろしく冷たい圧を掛けたような声で話してくる。





「長濱さんの携帯から掛けてます」





「…長濱さん……ああ…なんだ……何か用か?」





寝ぼけていて、概要がよく分からないが他者の携帯を借りて連絡してきている程の用なのかと首を傾げる。




「なんで、長濱さんが名字さんの番号を知っているんですか?」




「……あー…この前、たまたま仕事で知り合って……必要だったから……」




「仕事?」




「写真集の…撮影の手伝い……ちなみに、お前との関係は話してないから…大丈夫……」




「…ふーん……仕事でデートしたんですか?」




名の淡々とした回答に、友梨奈の声は冷静を装いながらも怒りが滲み出るので、自分との関係をバラされたかもという不安を感じていると思ったが違う様子だった。





「…デート?…あぁ…1日彼氏彼女という設定で…したなぁ………」




「わぁ!てち!恥ずかしいけん、あんまり聞かんとって?…名君!ビックリした?」




友梨奈の声が急にねるの大声に変わり、名は携帯を耳から離す。




「え、ええ……ちょっと、あんまり寝ぼけてて頭回ってないんすけど…」




「え!?もう寝てたと!?ごめん!!また電話するね?ばいばーい!」




何がなんなのか分からないまま、ハイテンションなねるは電話を切るので名の脳裏にはハテナマークが並びながら再び夢の世界へと落ちた。






〜・〜
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