欅の宿り木
□欅の宿り木 3話
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親指を上げて合図した名は友梨奈達が戻って来る前に背を向けて楽屋へと戻っていると背中に衝撃を受ける。
「名…っ」
「お前な…舞台から走って戻ってくるなよ」
名を後ろから抱き締めた友梨奈はそのまま背に顔を埋める。
どう考えても舞台上で観客に手を振ってから、ゆっくり歩いて追いつける距離ではなかったので一礼したら走ってきたのだと名は溜息をつく。
「だって…借りてた気持ち、返せなくなるから」
「んなもん、借りパクしとけよ」
「また…借りたいから…」
抱き締める力が一瞬だけ強くなった時、他のメンバーが友梨奈を探している声が聞こえて2人は距離を取る。
「こんなのでいいなら、いつでも貸してやる」
「ありがとう…また、電話するね」
「ああ」
他のメンバーが廊下に到着する頃には友梨奈が1人になっていて、それぞれの楽屋に向かう。
「恋愛の入り口に気づかない方が僕たちらしい……側にいられるだけで良い……か…私は嫌だな」
「ん?どうしたー?歌詞で違和感あったの?」
「ううん、なんでもない」
名が歩いて行った廊下の先を見つめながら、友梨奈は呟いてメンバー達と合流した。
fin