欅の宿り木
□欅の宿り木 3話
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「なんすか、こんな大袈裟なとこで〜」
「ちょっと、客観的に見てみたくなったからさ」
ダンス部の友達と遊んでいる時に紹介されたアーティストの人と仲良くなり、たまにステージに呼ばれて本番前に踊ることがあったが今日は歌番組のような豪華なステージでありスタッフが騒がしく動いていた。
「こんな遊びでバイト代貰って良いんですか?」
「とりあえず、時間もないし始めようか」
名は俗世に興味がない人間なので分かっていないが、今いる会場は全国放送される音楽フェスの会場である。
曲が流れ、名は注文通りにステップを踏み出す。
片手間に見ていたスタッフ達も手を止めて惹きつけられ、次第に観客が集まるが動きは更にキレを増す。
「名!楽しげな表情で!皆を誘って!」
ダンス中にリクエストが入り、真剣な表情をしていた名が不敵に口角を上げて笑みを見せる。
表情一つで「こっちこいよ」というものが伝わり、鳥肌が立った瞬間にウィンクをするので周囲からは黄色い声援が上がる。
「っした!!……え?なんすか!?」
フィニッシュを完璧に決めて、我に返ると周囲に人が集まっていて、目の前にはしゃがんで頭を抱えている依頼主。
「羨ましすぎる天性!やばいなぁ…今日のセットリスト変えたくなってきた!!」
「…すごかね!」
パチパチと拍手が聞こえ、目線を移すと友梨奈と同じグループ衣装を着た女の子が居て名は会釈する。
「いつまで座ってるんです!?スタッフさん呼んでますよ!」
「あー…よし!!俺、名を超えるパフォーマンスしてくるからな!!見てろよ!」
「プロが素人に何を言ってるんですか」
落ち込んでいるトップアーティストを雑に扱って、送り出している名の様子に周囲は大物なのだと勝手に理解して散っていく。