↑欅の宿り木 Chapitre final↓
□欅の宿り木 特別編〜坂道への一歩〜
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世界規模の感染症が蔓延し、混乱が更なる混乱を呼ぶような社会状況となった。
高校の卒業式も出来なくなった名前は車のトランクに必要な荷物を詰め込み、靴紐を右足からゆっくりと結んで空を見上げて5秒息を止め、心音を確かめて成功している自分をイメージしながら息を吐く。
「…どこまでやれるだろうか……いや、信じろ。自分を。医学を。」
自分の緊張を解く為のルーティンを行った名前は車のキーを強く握りしめると運転席のドアに手を掛けた。
「名前!!!!!」
ドアを開けた瞬間に友梨奈の怒鳴り声が聞こえて振り返るとマスクを着用した友梨奈が門から全力で走って来るのが見える。
「ゆり…お前、なんで?」
「どこ行くの?」
「…」
「ねぇ!どこ行くの!!?」
名前の疑問に答えず、強く手を握ってくる友梨奈は名前の行き先を知っている様子で声色を強める。