↑欅の宿り木 Chapitre final↓
□欅の宿り木 特別編〜山下美月の憂鬱〜2
1ページ/8ページ
「わっ……ごめんなさい…」
「っ!」
薄暗い通路で他の仕事を手伝っていた名前の背中に日向坂のセンターがぶつかり、お年頃の青年であればサインの一つぐらいは強請るかと美月は影から見つめる。
「…大丈夫?」
「え、名前くん…なん?」
「え…小坂さん?コンタクト忘れた?」
名前が声を掛けると菜緒の首は傾いて本人か確かめてくるので、名前は事態を悟って聞き返す。
「…しっ。またかって、怒られちゃうから」
「いや、無いと困るんじゃ…」
「楽屋にはあるねん。先にマネージャーさんが眼鏡ごと持っていっちゃって」
悪戯が見つかった子供のような表情をして人差し指を鼻先にかざし、名前の顔を見る為なのか至近距離まで顔を近づけた菜緒は小さな声で呟くので名前も同じトーンに合わせる。