短編集 -3-dimensional-

□Hypnotism
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「時間が経てば、戻ると言ってましたが………ふむ…何時間後でしょう…」





素人がかけた催眠など、すぐに解けるというのが専門家の意見だったので、とりあえず白石の自宅まで送って夕食を済ませて様子を見ていたが今のところは変化がない。





「わーい、名とお風呂〜」




「入りませんよ?」




「えっ!!?」




夕食で使用した食器を洗いながら考えていると、嬉々とした様子の白石が二人分のタオルを準備していたので名が冷静に断る。




「えっ?じゃないです。白石さんは一人でお風呂入れますよね?」




「ん〜…じゃあ、麻衣って呼んでくれたら一人で入るっ!」




「……麻衣は一人でお風呂入れますよね?」




一瞬、色んな事を考えたが風呂に一緒に入るリスク回避は最優先事項だと自分に言い聞かせた名は白石を名前で呼ぶ。





「入れるよ〜!」




満足げな白石は元気に手を挙げ、浴室へと走っていくので名は何故か駆け引きに負けた気分になりながら、自分の事務仕事を終わらせようとノートパソコンを開いた。





「…だーれだ?」





30分ほどで白石が出てきたのか、事務仕事中に背後から両目を手の平で覆われて名の視界は暗闇に包まれる。




「…ん〜…飛鳥ちゃんかな?」




「ぶっぶー」




「真夏ちゃん?」




「ちがうよー」




「絵梨花ちゃん?」




「もー、お仕置き」




事務仕事の最中に邪魔をされた名は白石に仕返しをしていると、不意に耳を甘噛みされる。



「ちょっ…」




「気づいてるくせに〜」




耳元で囁かれている事もだが、背中に押し付けられた胸の感触が衣類を着ているような雰囲気が無かったので名は思考が止まる。




「あの、麻衣?パジャマはどうしましたか?」




「パジャマ?着ないよ?」



「……着て下さい。今すぐ」




なぜ着ていないのか?

元々、着ていないから。




という、そもそも論で即答されたので名は溜息をつきながら強めの口調で返した。



「えー、やだ」




「……分かりました。別の女性スタッフを呼ぶので待っ」




名の言葉を白石は拒否するので、確かに着ていないものを着ろと言っている自分が悪いのかと名は携帯を取り出すが白石に奪い取られる。




「着る!……でも、一緒に寝てほしい…いいでしょ?」




先程とは違い、少し寂しげな声色の白石に名は小さく頷いた。






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