欅の宿り木

□欅の宿り木 4話
12ページ/13ページ


「さて…と…どうですか?仕事の参考になりそうでしたか?」



「うん…」



「途中から、普通に遊んでた感じになっちゃいましたけど良かったです」



「うん………」



楽しい幸福感に包まれた魔法のような時間が切れた現実が押し寄せ、ねるは俯いて名の言葉に応える。



「ねるさん?」



名の呼び方で抑えていた感情が涙となって溢れ出してしまう。



「何かマズかったですか?」



名を困らせてしまうと頭では分かっているが、涙を止める事が出来ず貴方が悪いわけではないと伝える為に首を横に振る事しか出来なかった。



「ごめ…んね……とぜんなかなったの…」


溢れ出す涙をそっとふきとって頭を撫でられると、余計に涙が溢れ出して静かに名へと抱き着いた。



「今日の出来事が…ぜんぶ…嘘になって消えるけん…離れとうない」



「ねるさん……確かに…彼氏彼女の関係は、終わっちゃいます…」



「…」



名の言葉に頷くが、ねるの抱きしめる力は更に強まる。



「俺たちの今日の思い出は無かった事にならないですよね?」



「え…?」



「俺はねるさんと友達なれたかなぁって…勝手に思ったんですけど…思い込みですか?」



「名くん…友達に…なってくれると?」



名の胸から視線を合わせてくるねるに名は困ったような笑みで頷く。



「てか、もう友達でしょ?」



「う、ん…うんっ…」



涙を浮かべながらも、嬉しそうな微笑を浮かべたねるは何度も頷いたが、日が完全に落ちる別れの時まで恋人同士の設定を満喫した。







after………
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ