欅の宿り木
□欅の宿り木 3話
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「お疲れ様でした」
「ああ、お疲れー!…どうした?楽屋戻らないの?」
「あー、えと欅坂のステージだけ観て行って良いですか?」
舞台袖で三浦のパフォーマンスを見ていた名は申し訳なさげに希望を伝える。
「なるほどね、良いよ。先に戻ってる」
「ありがとうございます」
名がアーティストに興味を持つのは良い傾向だと思った三浦は、そのまま楽屋へと戻っていく。
欅坂の紹介があってメンバーが次々と舞台に上がっていき、友梨奈と名の目線が合う。
「……気持ち…借りてくから」
完全に集中したゾーン状態に入っている友梨奈が軽く手をあげたので、腕組みをしていた名も軽く手をあげる。
「おう!」
2人の掌が音を立てて重なって友梨奈が出て行くと後ろにいた、ねるが顔を上げる。
「名君!?」
「あ、どうも」
「名君とハイタッチとか、最高かよ」
ねるに声を掛けられ、目線を移すと両手を上げてくるので何となく合わせる形になる。
「謙虚!優しさ!絆!キラキラ輝け!欅坂ぁ〜?」
「46?」
「ふふふ、完璧!」
ねるは掛け声に満足した様子で名とハイタッチしていくと後ろのメンバーから「ねる、何やってんの!?」と驚いた声が聞こえる。
「名字君、お久しぶりです!」
「お久しぶりです」
「あの…よかったら…私も、お願いして良いですか?」
「え?あ、はい」
少し恥ずかしそうに菅井が両手を上げるので、名もハイタッチして舞台に送り出すと、その後は流れになってしまい次々とメンバーとハイタッチしていく。
彼女達のパフォーマンスは観客達を魅了し、会場の興奮は更に高まって拍手に包まれながら大成功を収め、最後まで真剣な表情を崩さないままだった友梨奈が一瞬だけ名の方を向いて無邪気な笑顔を見せた。