賢者の石

□生き残った女の子
5ページ/8ページ

目覚めたばかりだし、目覚めたと言っても今は真夜中。
今日のところはこの部屋で安静にしていなさい。



もっともらしい理由をつけ、長く伸ばした髭をクルクルと細い指で弄びながらダンブルドアはどこかも分からない部屋から出て行ってしまった。

“この部屋で”とわざわざ言い残すと言うことは、この部屋から出るなと言う事だろうか?

さきほどダンブルドアが出したお茶を飲みながらクリスティは考えたが、やはり彼の言う通り、クリスティ自身、長い時を呪いのせいで眠ったまま過ごしていたことは確かなのだからここは大人しく養生しておこうと決めた。



しかし、何もしないのも退屈だ。
この部屋にはある程度の設備が整えられており、生活には困らなさそうだった。
円形の部屋、隣は洗面所だろうか?ドアのない通り口から洗面台のようなものがちらりと見える。
部屋の中央にベッドが置かれ、雲が晴れたせいかさきほどよりも窓から差し込む月の明かりが強く、部屋全体を見渡せるようになっていた。



ふとお茶を飲む手を止め、最初に目についたベッド脇に置かれたテーブルの引き出しを開けてみる。



「・・・・・・あ」



引き出しの中にコロンと置かれた杖を見つけ、クリスティはそれを手に取った。
まぎれもなく自分の杖だ。ダンブルドアがここにしまっておいてくれたのだろうか?



しばらく杖と見つめ合ったのち、とりあえず部屋の埃だけなんとかしてしまおうとクリスティは杖を振った。
相当久しぶりに杖を振るったはずなのに眠っていたせいかそんな気はちっともせず、杖は忠実にクリスティの願いを叶えてくれた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ