Super Smash Brothers -IF-

□序章
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序章『Smash Bros. IF』


信じ続ける限り、そこに未来はある。
だから人は抗い続ける。
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ぐちゃり。

空間一体に鈍い音が響く。

真っ赤に飛び散る血飛沫と共に、青髪の青年の身体はは地面へと投げられる。
血肉が飛び交い、開いた腹の隙間からは内蔵が漏れ出す。

それを目の前にして、青髪の青年と瓜二つの黒髪の青年は茫然、そして気がハッキリすると同時に悲鳴をあげた。

ーーまずい、これはまずい

咄嗟に治癒魔法を施そうとする、が、効果はさらさらなかった。というのも、コアである心臓が身体から抜かれていたのが原因だった。

ーー早く、戻さなければ

黒髪の青年は一心不乱に辺りを見渡す、が。
青髪の青年の心臓は敵魔物の手にありーー、

「ーーあー」

ぶちゅっ。

鈍い音が響き渡る。一つ大切な人物の生命が青年の目の前で奪われた。

ああ、と間抜けた声を漏らし、青年はその場に崩れ落ちる。絶望しきったその烈火のような目は血のように濁り、一寸の光も差し込まない。

辺りには大勢の人々が肉塊と化している。他愛のない話をし合っていた親しき友人や知り合いでさえ、無惨にも血溜まりの中に転がっていた。最も、それがもはや彼らであったということさえ伝えるのが厳しい状態であるが。

ーーもうこの『世界』は終わりだ

約数体の魔物ーー亜空生物に滅ぼされた世界を目前に、青年は黄昏れる。もう、亜空生物が青年に近付こうが、殺されようがどうでもよかった。というより、殺されるのが本望のようにも思える。

ははっかっこ悪いなぁ、と生気の感じられぬ声で青年は呟く。

「じゃあ、また」

ーーこの輪廻する世界で。

次の瞬間、青年は亜空生物に頭から喰い殺された。ーー五十三回目の死だった。


ーーーーー
ーーー



世は、美しくも脆い。

人一人の決断がこの世界の全てを決め、結末を変えていく。正しく、 平和と混沌は紙一重なのだ。人々が何を願い、どう行動するか。それらによって世界の終焉は左右された。

ある青年は世界に希望を願った。この世界で奮闘する友の傍らでそう強く願った。

ある青年は世界に幸福を願った。この世界の残酷な終焉を覆そうと、憤怒を燃やした。

ある青年は世界の愛情を願った。この世界の不平等さに嫉妬し、性愛に縋った。

ある青年は世界に静寂を願った。この世界の性質、地位に失望し、怠惰に縋った。

ある青年は世界の知識を願った。この世界の己への期待に絶望し、強欲に縋った。

ある青年は世界に説明を望んだ。この世界に生み出された理由を追い求めていた。

ある人物は世界に平和を望んだ。この世界が生涯誰にも破壊されず、平和に進んでいく事を祈願した。

ある人物は世界に混沌を望んだ。この世界を破壊尽くし、一定の人物への復讐を目論んだ。

ある人々は世界に幸福な終焉を願った。平和に笑い合い、時には争い、和解するーーそんな簡単な日々を望んだ。

これから始まるのは、それぞれがそれぞれの望みを抱えながら、世界の終焉に抗おうとする、一つの醜くも、美しく歪んだ人生のお話。苦痛や悲劇の最中、手にするのは希望か、絶望か。迎えるのは幸福か、混沌か。

ーー今、物語は幕を開ける。


【Super Smash Brothers -IF- 序章 完】


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