遠くて近い

□もう恋なんてしない
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正確には部外者ではない。

「またお前か。朝っぱらから騒がしい」

乱入して来たのは風紀委員の安斎(あんざい)以下、主要メンバーの3名で、風紀委員会は俺らと何かと関わりの多い仕事を遂行しているため、お互いのカードキーは、お互いの活動拠点にも対応している。
そんな理由から、生徒会室は教職員以外の一般生徒が入ることは出来ないが、風紀委員の面々は自由に出入り出来るのだ。
生徒会役員が風紀委員会室に出入りすることしかり。

「てめえがなかなか重い腰を上げねえからだろうが。何かあってからじゃ遅いって、いつも言ってんだろ」
「だからって朝っぱらから部下を引き連れて来るか?風紀は余程暇なんだな」
「なっ、お前な……」
「まあまあ、落ち着いて。旭(あきら)、紅茶飲むでしょ?雪村(ゆきむら)君達も」

夕陽が風紀の連中を宥めて促すと、三人は生徒会室の隅にある応接セットのソファーに大人しく座った。


風紀委員長の安斎の見た目はもろに不良で、口調も典型的な不良のそれだ。
安斎の見た目と口調が変わったのは高等部に進学して風紀委員会に入ってからで、安斎いわく、なめられないように相手を威嚇するためらしい。
だとしたら、単純すぎんだろ。

昔はただ正義感が強いだけのやつだったが、高一で風紀委員になってから安斎は髪を金髪に染めた。
それからピアスをじゃらじゃらとつけて厳ついチョーカーもつけ、制服もそれらしく着崩して。
とどめに昔から口の悪いやつだったが、普段の口調も不良らしく変え、中等部の時とは全くの別人になってしまった。

一方、髪を青に染めているのが副委員長の雪村で、雪村のそれはウイッグかもしれないとの噂があった。
それは、雪村の髪は現実的に有り得ないような綺麗な色をしていて、安斎やナンバー3の眞田(さなだ)のように現場で立ち回ることが滅多にないからだ。
現場で立ち回るとウイッグがズレるからと言う単純な理由が噂の出所らしい。

雪村は言うなれば風紀の頭脳担当で、生徒会で言えば副会長のような立場にあった。
まるでアニメの登場人物のように黒縁眼鏡を掛けたクールな秀才キャラで、当然恐ろしく整った顔をしている。
体は少し小柄(170cmあるかないかぐらいか?)で、雪村も夕陽と同じように『抱かれたい』と『抱きたい』ランキングの両方にトップ10入りしている。

因みに安斎も本来なら生徒会長になるぐらいにカリスマ性があるやつで、安斎が生徒会の総選挙を辞退して風紀委員会入りしなければ、間違いなく安斎が生徒会長をしていただろう。
悔しいから言ってやらないが、俺よりも雄々しい顔やすらりと長い肢体は神々しいほどで、安斎にはどんな生徒も逆らえないオーラがあった。
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