眠れる森の委員長

□委員長は委員長
1ページ/6ページ

『……ちょ、委員長』

誰かが僕を呼ぶ声がする。
どこか遠くで僕を呼んでいる。
夢うつつの中でそれを聞いていると不意に、

「おい、こら。起きろって」
「わあ!」

耳元で大きな声がして、僕は慌てて跳び起きた。

「委員長。担任が呼んでたぞ。今すぐ職員室まで来いって」
「……ん?え……あ、なんだろ。ありがとう、藤田君。行ってみるよ」

眠い目を擦りながら立ち上がると、藤田君は友達との会話に戻って行った。
僕は基本的に休み時間はうたた寝をしていて、始業のチャイム以外で目覚めることはあまりない。
始業のチャイムが鳴ると不思議とぱっちり目が覚めるんだけど。

「委員長。校内放送でも呼び出されてたよ」
「うそっ。本当に?!僕、ぐっすり眠ってたからか全く聞こえなかったよ。ありがとう、住友君」

教室を出て行こうとしたら、今度は住友君に声をかけられた。


住友君にもお礼を言って、僕は職員室に急いだ。
行く途中に何度もいろんな人から声を掛けられて、その一つ一つに返事をしながら。

僕は小学生の頃からずっと委員長をやっていて、いつの間にか皆から『委員長』と呼ばれるようになった。
委員長は委員長でも自分のクラスの学級委員長だから、そんなに胸は張れないんだけどね。

例えば、風紀委員だったり、学園祭の実行委員なんかの委員長だったらかっこいいんだけど。
残念ながら特別な委員長に就任したことはなくて、あくまでも学級委員止まりだ。

二年生に進学してもう一週間が過ぎた。
去年も勿論、学級委員長をしてたから慣れたものだ。

「ふぁ……」

思わず大きなあくびをしてしまって、なんとなく目が合った隣のクラスの子に笑われた。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ