とある男子高校生の受難

□スクープ!
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靴箱の物影に隠れ、こっそり会計で双子の翼様と司様を盗み見る。
二人だけでいらっしゃるのは本当に珍しくて、これだけでスクープになるぐらいだ。

(――カシャ、カシャ、カシャッ!)

僕はすかさずシャッターを何度も続けざまに切った。
つまりは連写ね。

因みに僕が持っているのはアナログの一眼レフカメラで、写真を現像するのにフィルムを使うフィルムカメラだ。
暗室を用意しなきゃいけないし、いろいろと面倒だけど暗室に篭って現像する時間が堪らなく好きだったりするんだ。

何より、撮った写真を現像するまで見られないところがまた堪らない。
その場でチェックしていらない写真を消してく方が簡単だけど、失敗した写真も僕が撮ったものだから、フィルムを現像して写真を見ると次に繋げようってなる。

「わ、シャッターチャンス!」

実は中学時代に写真コンクールで入賞していて、写真部からも誘われてたんだよね。
うちの学校には新聞部以外に報道部というのがあって、こちらは役員の皆様に直接インタビュー出来たりする。

ただ、こちらは音声のみの校内放送や私設テレビ局での校内番組作成とかが主な活動で、あちらは新聞部と比べて露出度が高い。
それだけに役員の皆様の目につく機会も多くて、下手をすれば悪い意味でそれぞれの親衛隊メンバーに目を付けられてしまう。
だから僕みたいに陰からこっそり、だけど生徒会公認で活動したい人間には向いていないのだ。

それに比べて新聞部の腕章さえ付けていれば、万が一、役員の皆様の周りをうろついているのを見られても、制裁の対象にはまずならない。
報道部とは違ってパパラッチのように役員の皆様に気付かれなように活動するのが新聞部で、目立った行動を起こさないからだろう。

「えへへ。いいの撮れちゃった」

翼様が身を屈めて司様に耳打ちしてるとこ。
これって一見してなんてことない普通のワンショットなんだけど、マニアにすれば堪らない写真だよね。
つまり、僕みたいに腐ったフィルターをかけて見てる人には。

入学してみてわかったんだけど、高等部からの外部生には僕と同じ趣味の人が結構いて。
つまりは腐男子ってやつで、全校集会で役員の皆様が檀上に立つと、周りの生徒から腐男子にしかわからないキーワードが飛び交ったりする。

校内新聞も『東堂様(生徒会長)に新恋人発覚か?!』なんかの号外が出るとエスカレーター組は、皆、戦々恐々で記事を見て一喜一憂してるのに、外部生の大半は飯旨(めしうま)状態なんだよね。

「記事は……、田中先輩に頼もうかな」

別に僕が書いてもいいんだけど、新聞部には文芸部から引き抜かれて途中入部したすごい先輩がいる。
その記事内容は真実と妄想が半分ずつで、妄想部分で外部生の腐男子を滾らせて、エスカレーター組の夢見るチワワたちを一喜一憂させるんだ。
僕もその記事を目にした瞬間、先輩のファンになっちゃったし。

「あ。翼様たち行っちゃう!」

何よりこうして外部生エリア以外に自由に出入り出来るのはポイントが高い。
本来なら一年生の外部生が皆様に近付こうものなら、それだけで制裁の対象になっちゃうもんね。

それでも、いくらなんでも生徒会室までは追い掛けられないから、僕は歩き始めたお二人の背中を必死にカメラに収めた。
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