とある男子高校生の受難

□部活男子。
1ページ/4ページ

(卓球部)

「いーち、にー、さーん、しーい……」

なんと言うかとにかく地味だ。
もともと地味だと思ってはいたが、ここまで地味だとは思わなかった。
一日の授業が終わった後、今日も俺は体育館で壁に向かって淡々とラケットを振り続けている。

入部一週間にして幽霊部員化していた俺だったが、初めての練習試合で経験者に勝ってしまい、部活をサボることが難しくなってしまった。

「じゅーはち、じゅーく、にーじゅう……」

先輩と顧問言わく、俺には才能があるんだそうだ。
俺が対戦したのは卓球歴5年を誇る二年生の先輩で、先輩は団体戦でレギュラーの座に着いている。
きっとまぐれだろうけど、俺はそんな先輩に勝ってしまったのだ。

「さんじゅうさーん、さんじゅうしーい……」

つーか、これ、地味にきついな。
俺達、卓球部員一同は壁に向かって一列に並んで淡々とラケットを振っている。
中腰のこの姿勢は何気にきつくて、数分で足がガクガク震えてくる。

つか、こんなんで練習になってるんだろうか。
高校になって初めて何となく気になっていた卓球部に入ってみたけど、毎回始まりはこの地味すぎる素振りで、その異様な光景は卓球部の風物詩になっている。

「はちじゅーはち、はちじゅーきゅー……」

俺と同室の大和はと言えば、見事新聞部に入部を果たした。
と言うのもうちの新聞部はかなりの人気があり、入部するのに入部試験なるものがあるのだ。

内容はよくわからないけど噂では情報収集の速さを競ったり、期間内にスクープ写真を撮る等の実践的なものまであるんだそうだ。
いつもパソコンに向かってブツブツ言ってる大和は、どうやらそれらの才能があったらしく。

倍率はなんと9倍だったとか。
新入部員は10名だから、その倍率からも人気のすごさが窺える。
因みに卓球部の新入部員は俺を含めてたったの4人で、先輩に勝つまでもなく団体戦に駆り出されそうな勢いだ。

「ひゃくじゅうろーく、ひゃくじゅうしーち……」

や、やばい。
太股がぷるぷるし始めた。
一つのポーズを保って腕だけを振っているせいで、二の腕もパンパンに張っている。

卓球部員の見た目がひょろっとしてるから気付かれないけど、実は全員、ほっそいくせにしっかり筋肉が着いてたりするんだよな。

「にひゃくにー、にひゃくさーん……」

つか、いつ終わるんだよ!
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ