とある男子高校生の受難

□残念無念、腐男子君。
1ページ/3ページ

「ちょっと、高橋君。こんなとこで寝てたら風邪ひくよ」
「んー……」

こうやって寝顔を見てたら可愛く見えなくもない……かな?

リビングのソファーで眠り込んでしまった同室者の高橋君の肩を揺すりながら、僕はその寝顔を覗き込んだ。


念願の全寮制の男子校に入学してはや一週間。
今んとこ、僕が思い描いていたような美味しい思いはしていない。
実は僕は腐男子ってやつで、邪な気持ちでうちの高等部を受験していたりするんだけどね。

うちの学校は幼稚舎から大学まで一貫の男子校で、中等部と高等部は全寮制で、高等部からは一般の外部生の入学も受け付けている。
そもそもが日本に於ける全寮制の男子校の礎を築いた伝統ある学園で、山の麓の広大な敷地に学校と学生及び一部の教員の寮が隣接して建立されている。

つまりはこんな説明もいらないぐらいに王道な学園都市に学校と寮があり、近隣には森林公園もあるし、敷地内にはちょっとしたショッピングモールまでもがあったりする。
その施設は洋服屋に美容室、飲食店、本屋、カラオケ、ゲーセン、アミューズメントなお店等々で、酒と煙草、居酒屋(これらは大学生御用達ね)まであり、風俗店以外は何でも揃っていたり。

それと言うのも山の頂を支点にして、山の反対側に僕らなんかの庶民は絶対に入れないような有名私立の男子校があるからなんだよね。
その学校はうちと同じ形態だけど世界レベルのセレブのエリート達が学ぶ全寮制の男子校で、ただそちらは一般には開放されていないエリート校だ。

近隣の施設やショッピングモールはその学校の生徒も利用しているから、僕達一般庶民には手が届かない施設もたくさん備わっていたりするんだよね。

学校の方もそこに女の子がいないのが不思議なぐらい、この学校(寮も含めて学園かな)にはなんでも揃ってて。
施錠も支払いもカードで出来るし……と、この辺りは王道設定だから説明しなくていいよね。

寮があるエリアには高級レストランやファストフード店まであって、学校には普通の学食とこちらにも高級レストランが……、つまりはホントに『ザ・王道』って感じ。
ただ、一応は学年ごとにネクタイの色が違うブレザーの学校指定の制服もあるけど、式典時だけ着用が義務付けされていて、普段は基本的に服装は自由だったりする。

つまりは寮でも学校でも服装にはあまり違いがなくて、これにはちょっと萌えが半減されちゃってるけど、人気者の私服を堪能出来る利点はある。
生徒会の執行部メンバーも王道の面子が揃っていて、人気者には親衛隊もあるし、校内新聞でスクープ写真が出回っちゃったりもしてるしね。

まあ、エスカレーター組もどこそこの会社の御曹司レベルだったりするし、一般庶民の僕らが途中入学出来るぐらいだから、僕らの学校は完全な王道とは言い難いんだけど。

それでも擬似王道学園体験には持って来いの環境なわけで、入学前の時点では今頃ウハウハ言ってる予定だったんだけど。
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ