とある男子高校生の受難

□平凡?いいえ、普通です。
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「眠い……」

どうも子供の頃からの癖がなかなか抜けない。

「ちょっと、高橋君。こんなとこで寝てたら風邪ひくよ」
「んー……」

只今の時刻は夜の12時少し前。
同室の大和の声が遠くに聞こえる。

実は俺、夜の12時近くなるとめっちゃ眠くなるんだよな。
16になった今もそうで、自分ではこの魔の時間をシンデレラタイム(かっこ笑い)と呼んでいる。

ここは全寮制の男子校の寮の一室で、俺は父さんの海外への転勤により、4月からこの学校へ編入することになったのだった。



編入すると言っても実質的には入学で、幼稚舎から大学まで一貫のうちの学校は、高等部からは外部生の生徒も受け入れている。
もっとも実際に全寮制なのは中等部と高等部だけで、全国の同じような学校の中でも比較的割安な入学金や授業料に、俺はこの学校を受験することにしたのだ。

うちの学校のエスカレーター組はそれなりの金持ちばかりみたいではあるけど、ドラマや少女マンガにありがちな環境までは行かない。
それなりの企業や会社の御曹司が集まってはいるみたいだけど、全国有数の……だとか世界的に……な生徒はいない。

セレブと言うよりは単に金持ちと言える生徒が大半で、奨学金を貰って潜り込んだ俺は入学から一週間。
入寮からは十日経ち、それなりに学校に馴染み始めていた。



「ほら、高橋君。寝るならベッドで寝なきゃ」
「んー……」

今、こうやって世話を焼いてくれているのは同じクラスでルームメイトの大和葵だ。
大和も俺と同じ高校からの外部入学組で、一年生のうちは外部生とエスカレーター組とはクラスも学生寮も分かれている。

そもそもエスカレーター組とは生活水準が違っていて、エスカレーター組の部屋はそれなりに広く豪華な造りになっているそうだ。
クラスも別だから今のところ、エスカレーター組の生徒と関わったことはない。

2LDKの二人部屋はユニットバスとキッチン付きで、他にも洗濯機と乾燥機も完備されていて住み心地は決して悪くない。
いかんせん自炊や洗濯をしたことはなかったけど、有り難いことに大和が家事を買って出てくれた。

親と離れて少し不安だったけど、大和のお陰で楽しく過ごせそうだ。

「高橋君ってば」

大和の声を耳元で聞きながら、俺はそのまま眠りに着いた。
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