【お団子大好き最強忍者】

□浴衣姿
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「才蔵さん遅いなぁ。」

お祭りが開かれた町並みは
いつもより活気づき
人々も浮足立っているのかもしれない。

日も落ち、明るく照らされた
たくさん提灯の灯りがとても幻想的だ。

食べ物を買いに行ってくれた才蔵さんの帰りを
一人待っていると…

「ねえ、さっきの人かっこ良くなかった?」

「一人なのかな。やっぱり声かけてみる?」

そんな声が聞こえてくると
私は不安で胸がいっぱいになる。
普段、才蔵さんの事を近くで見ている私ださえドキドキするくらい
浴衣姿の才蔵さんは、また一段と
艶っぽさを纏っていて
大人の色香を漂わせていた。

「あ、いた!さっき人!」

「ねえ、いこ!」

そんな女の子達の後ろ姿を
目で追いかけると…

そこには、山盛りのお団子と
私のお願いした綿飴を両手いっぱいに抱えた
才蔵さんの姿があった。

「あ、あの…そのお団子持ちましょうか?」

「もうすぐ、花火が始まるんです。
一緒にいきませんか?」

町ゆく女の子の達は頬を赤らめながら
目をキラキラさせて次から次へと
才蔵さんに話し掛けてゆく。

その光景を見た瞬間、
私はいてもたってもいられずに
走りだしていた。

「だめー!!!!!」 

人混みを掻き分けながら
才蔵さんの元にたどり着くと
自分でもびっくりするほど
大きな声が出た。

「…お前さん、何してるの。
動かないで待ってる約束でしょ?」

「だ、だって!才蔵さんが!」

「ん?俺がどうかした?」

才蔵さんは口角をあげながら
少し嬉しそうに私の顔を覗く。

「女の子達に…囲まれてるし
みんな、才蔵さんの事…格好いいって…」

「何、ヤキモチ?
そんなに妬いてくれるなんて
珍しい事もあるもんだね。」

才蔵さんは私にだけ一瞬
少し困ったように微笑むと
得意の作り笑顔を振りまきながらこう言った。

「悪いね、俺の嫁が。
この人怒らせると厄介だから。
もう俺に近づかない方がいいんじゃない?」

「……ちょっと!才蔵さん!」

いきなり才蔵さんの口から嫁と言われた事の動揺と
私が怒るとこわいと悪者のように言われた理不尽さに
口をへの字にし、才蔵さんに視線を送る。

「なんだぁ。やっぱり奥さんいるんだ。」

「残念。帰ろ?」

でも、周りにいた女の子達には
才蔵さんの一言は効果抜群みたいで
みんな少し、落ち込んだ表情をしながら
その場から離れていった。
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