【お団子大好き最強忍者】

□手紙
1ページ/1ページ

梅雨の合間の僅かな晴れの日
私は洗濯に精を出していた。

"才蔵さんの部屋のお布団も干しておこうかな"

任務でいない才蔵さんの部屋に入ると
日に日に彼の気配が消えていってしまう
静かな部屋に胸がズキンと痛む。

「さて、頑張りますか!」

敷布団を抱えると
才蔵さんのぬくもりをほんの少しでも感じたくて
無意識に布団に顔を埋めてしまう。

"才蔵さん…会いたい"

梅雨に入り雨の日も続いていて
風邪引いてるんじゃないか。
無事でいてくれているのか。
いつも以上に心配だった。

布団も干し終わり、静かな部屋に腰をおろすと
机の引き出しが僅かに開いているのが目に入った。

"あれ?引き出し空いてたっけ…"

才蔵さんがいない間も、部屋の換気をしたり
掃除や洗濯をしたり
何かと部屋に入る事は多い。

気付かなかっただけだろうか。
でも、3日前に掃除した時には
空いてなかったように思う。

いけないと思いながらも
気になってその引き出しを覗いてみると
2つ折りになった紙切れが一枚。

何か大事なものだったらどうしようと思いながら
それを開くと…

"傍にいる"

たった一言。
主語もない、その素っ気なくも見えるその手紙は
間違いなく、私の愛おしい人が書いたものだった。

不器用で、でもそこから感じる深い愛情に
その短い文章が読めなくなるほど
視界が歪む。

「………才蔵さん」

ぽたぽたと落ちる涙が
折角の手紙を濡らしてしまった。

「何泣いてんの。」

「え?」

ふと上から聞こえてきた優しい声に
驚いて顔を上げると
突然唇を塞がれた。

「…ん、っ…はぁ…さぃ、ぞ…さ………」

続けざまに起きる出来事に頭が混乱しながらも、
ずっと待っていたそのぬくもりを確かに感じて
唇を離せないでいた。

「そんな顔させたかったわけじゃ無いんだけどね。」

名残惜しいように唇が離れ
目を開くと、慈しむような優しい眼差しで
彼は私の涙を拭ってくれる。

「才蔵さん…お帰りなさい。」

「ん。ただいま。」

嬉しくて自分から抱きつくと
才蔵さんはぎゅっと受け止め
ぽんぽんと頭を撫でてくれた。

「あ、そうだ!お団子召し上がりますか?
今から作って来ますからちょっと待ってて下さい。」

「いらない。」

「でも…」

「…団子よりお前さんをちょうだい?」

「え!///」 

才蔵さんはそう言うと
いつものちょっと優しい目の意地悪な顔で
私の顔を覗くように近づいてくる。

「さっきのじゃ全然足りない。」

「……私も…才蔵さんが足りません///」

久しぶりに会えたからなのか
いつもより少し素直になれた私は
顔を真っ赤にしながら
小さな声でそれを呟くと

大好きな人からの深い愛に
溺れていくのだった。


ーendー

あとがき
あの手紙は才蔵さんが清広さんに頼んで届けたもの。



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ