【お団子大好き最強忍者】

□露払い
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「お前の露払いが俺の任務だからね」

自然とその言葉が出ていた。

“露払い"
貴人や神霊など高貴な者を先導すること。

暗い闇の世界に生きる自分には、
陽だまりのように無垢で柔らかな
姫の存在はあまりにも眩しくて…
本当に本当にただ大切だった。

15年前あの桜の木の下で俺を救ってくれた
小さな手のぬくもりを思い出して
ぐっと拳を握り締める。
あの時からずっと、彼女は心の支えだった。
二度と会う事はない、でも確かにそこにあった。
あの忘れられない団子の味が
何よりの証拠だ。

あれから何度も色んな店で
上手いと言われる団子を食べてきたが
あれに勝るものなんてあるわけがなく、
まさか、もう一度あの味を口に出来るなんて思いもしなかった。

どうしてまた俺の前に現れた。
その手は何度も何度も血に塗られ黒く汚れ
壊れかけた荒んだ心を奥歯を噛み締めて
なんとか自分を保ってきた。

あの時のように、また俺を助けにでも来たとでも言うのだろうか。
でも、もうそれには遅い。
せめて、姫だけは巻き込むまいと
遠ざければ遠ざけるほど
思いはどんどん膨らんでゆく。

俺には、思いを告げる資格すらない。
だけど、これくらいなら許されるだろうか。
お前さんには幸せになって欲しいんだよ。
この俺が他人の幸せを願うなんてね。
柄にもなく、そんな事を思いながら
思わずふっと苦笑いがこぼれたのだった。


〜end〜



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