東京少女

□プロローグ
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夜の街をひとり漂う。
都会の眩しい喧騒に、薄明るい光に照らされ浮ついた足取りの少女がひとり紛れ込んでいた。


その街では、ちかちかと移り変わる広告塔の揺れる無数の明かりが官能的なまでの眩しさで人々を誘っている。
そして人は明かりを求めて飛びかう蛾のように
その明かりからは逃れられずにいる。その明かりが身を滅ぼす罠だとも知らずに。


耳に好みの音楽を響かせながら歩く彼らだって
それが機械音を繰り返しコピーしただけの集合体であることを忘れ、ただそれが自分の個性や感情を表してくれるものだという盲信に浸っている。


疲れた顔のサラリーマンも、友人と噂話をする女子高生も、全て全て平等に、ネオンは青白い光で彼らを見つめ、そんな事も一切気付かずに人々は通り過ぎていく。


私もまた、そのうちの一人で
夜が何食わぬ顔つきで近づいてくるのを受け入れ、喧騒のメロディーに身を任せて彷徨っていた。


この街では誰も彼もネオンに絆されたのか、はたまた本当は、私はここにいないのか

そんな疑問を抱くことさえが億劫に思えるほどに








誰も闇夜に溶けた少女に気づかない





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