壊レタ世界ノ…

□疑念と隠蔽
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「ねえ、2B」

水無月を劇場へ放置したまま2Bと9Sはロビーの階段を降りる。
ふと、9Sは思ったことを告げるために2Bを呼び止めた。
 
「何?」
「さっきの機械生命体、何だか不思議な事を言ってました。」

さっきの機械生命体、それは2人がアンドロイドの行方を探していた時に遭遇した歌姫のような機械生命体。
結局はその機械生命体がアンドロイドを捕らえて使役をしており、つい先程2人の手によって倒された。
9Sはそんなこと有り得ない、と思いつつも段々と確信を持ってしまっている理論を口に出す。

「まるで、感情が」
「機械生命体に意識なんかない……そう言ったのは貴方よ。9S。」
 
2Bの言葉はトゲはあるものの、貴方は間違っていない……という励ましにも聞こえた。
しかし、9Sは腑に落ちない声色で、そうですね……と返すことしか出来なかった。

「それに、私はあの白いヨルハ部隊員が気になる。何故、ろくな武器も持たずにあんな所にいたのか……」
「ミナヅキさん……でしたっけ?確かに、単独行動をするには装備が甘いというか……持ってたの鉄パイプだったし……」

調べてみましょうか、と9Sは後ろに控えてるポッド153へ視線を移す。

「ポッド、あのミナヅキっていうモデルの基本情報は……」
「報告:当該機体ミナヅキモデルは先程遭遇したもの以外の義体は存在せず、唯一無二のヨルハ機体となっている。主な能力はアンドロイドのメンテナンス及び敵性機械生命体へのハッキング。」

9Sと2Bは顔を見合わせる。
何故そんな貴重な機体が危険な地上へ下りて任務に当たっているのか。
2人には同じ疑問が浮かんだ。
それに、敵へのハッキング行為は自我データの汚染が伴うためS型モデルのみの特権のはず。

「スキャナーモデルでもないのにハッキングの許可があるなんて……」
「……とりあえずここで考えていても何も分からない。早くレジスタンスキャンプへ戻ろう。」
「そうですね……」

2人はロビーを後にして、遊園地へ繋がる橋に出た。
出入口となる大きな門の所をよく見ると、浮遊型の機械生命体がこちらの様子を窺っていた。
 
「敵……!」

2Bは臨戦態勢に入る。
しかし、その機械生命体は白旗を掲げており静かに佇むだけ。

「ワタシ、敵ジャナイ。」
「え……?」
 
機械生命体から発された言葉に2人は言葉を無くす。
だって、機械生命体はここまで自然な言語を話すことなど今まで見たことがなかったから。
 
「アナタ達、壊れた機械生命体、倒してクレタ。」
「機械生命体が、こんなに言葉を使えるなんて……」
「お礼スル。ワタシ達の村ニ来イ。」

目の前の機械生命体の言葉に2Bはどうするか9Sへ視線を向ける。
9Sは少し考えたあと頷き、浮遊する機械生命体を見た。
 
「罠かもしれませんが……とりあえず、情報収集の為に行ってみましょうか。」
 

9Sの言葉を聞いた機械生命体は導くようにゆっくりと動き出した。
 
 
 
 
 
 

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