若様が好きすぎたのでファミリーに就職しました

□就職と修羅場
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おっす!オラ信。
信って書いてモブってんだ。
オラ就活に成功し、いまはファミリーのちょうしたっぱとして働いってぞお!!
少年誌の世界で就活なんて言うなって?
いいじゃん。どの世界にも就活はあるんだ。
3日前くらいから門兵として働いているんだけどすごいね〜この仕事。やめる人が多いいと聞いたけどすっごいわかる。
日差しは強いし、ただ立ってるだけだし。
でもそれに見合った収入は入るし、何よりここは若様撮影のベストスポットなのだ。
バレないように撮る技術は習得済み。
横顔も正面も撮れる。最高だ。
やめるやつはどういう神経してんだ。
3日経ったが隣のやつは毎回変わる。毎日が初めましてだ。改めて考えてみると笑えるな。
おっと、あと3分で若様が出てくる時間だ。
カメラを片手で握りじっと待つことにしよう。

「フッフッフそれでな...」
「...そうかよ」
「ったくツレねぇな?」

若様の声だぁッ!?!しかもなんか楽しそう。
これは久々に笑顔が見れるんじゃ...

「いまからデートなのに」
「うるせぇ!テメェから誘ってきたんだろうが!?」
「お前も嬉しそうだったろ?帽子を深く被りなおすクセ、まだ治らねぇな?」
「ッ...黙れハゲ怪鳥桃色野郎」

この素っ気ない返し方はッ!?ファミリーの二枚目トラファルガー・ローさんではッ!?
うっわ、ちょーレア。これはアルバム集に新たな風を巻き起こすのでは!?
シャッターチャンンンンスッッッッ!!!

「おい」
「ヒェ」
「そこのお前だよ」

クイッと若様が指を曲げる。
うわ、その指の動きエッチぃですね...って言ってる場合かよ!!
うわわわわ身体がぁ、身体がすいとられるぅぅ
ありがとう神様いままで若様の追っかけをさせてくださって。そっちへ行ったら集めた写真の公開ショウするからね。
頭の中でアーメンしながらも引きずられる。
あと2歩で若様の太ももにレッツダイビング!!できるところでピタッと止まった。
若様が手を振り上げる。
うわぁ...若様の手で死ねるなら本望だ。とか思いつつ胸の前で手を組んだ。でも、痛くもなんともない。混乱しつつ見上げると、若様の手が頭に触れていた。

「おい...ハゲ、そいつ胸の前で手ェ組んでんぞ」
「祈るほど嬉しいか?」
「馬鹿野郎。怖がってんだ」
「あ?」

気がついたように振り返り、目が合う。
せっかく目があったのに細い悲鳴しかあげれず自分のチキンさに絶望する。
若様の背後に目線を送ると仕方ねぇという顔をして若様に話しかける。

「やめてやれ。怖がってんだろう」
「嬉しがってんだよ。な?」

にいっと笑ってこっちをみる。ちょうど日が差しサングラス越しでも若様の瞳が見える。
ひえ...若様まつげなぎゃい..。
あわあわしてると最後にポンと頭を軽くたたき、そのまま引く。

「この仕事つづけるの大変らしくてな。まだ応募終了から3日経ってしかねぇのにもう3人やめてんだ。こいつだけ変わらないらしくてな...」
「度胸あるな」
「フッフッフ俺が選んだだけあるだろう?」

最後に頑張ってくれ。と一言残して去って行ってしまった.......。
今の一連の出来事は全部夢だったのか.....。
じゃないとあの若様に頑張ってくれなんて言われるはずがない。
隣にいた同僚に肩を揺さぶられる。

「お、おい!大丈夫か!?」
「ふぇ....?たぶん」
「腰ぬけてやがる」
「ははは...今の夢?」
「?自分の頬つねってみろ」
「....痛いです」
「なら本当だろ」

その後、隣にいたこいつは仕事を辞めなかった。理由を聞くとほっとけないから、と衝撃の応えが返ってきたが別に少女漫画のドジっ子ヒロインみたいにキュンとしたわけでも、ここから始まる禁断な恋にもならなかった。
いわれるなら若様が良かったと内心思いつつ好意として受け取っておいた。
これから先、前髪をスパンッと切られることも食事を心配されることも甘やかされることも全く予想していなかったが....
それはまた別の話。

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