死にたがりの中将様

□死にたがり中将様の遠出
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「ハル中将殿!船の準備完了いたしました!いつでも出航できます」
「ありがとう。俺もすぐに行くよ」

呼びに来た部下に礼を言い、ハルは昨日まとめた会議用の資料をカバンに入れる。
機密書庫のソファで丁寧に毛布まで掛けられて眠っていたので、頭はスッキリしたしいつもより良い資料ができたのだが、誰があんなに綺麗に浴衣を直してくれたのだろうかと疑問に思っていた。
海軍本部の港に出ると軍艦と王勢の海兵達に敬礼の形で出迎えられる。ハルが軽く手を挙げるとザッと足音を立てて一斉に直立の状態に戻った。
だが、すぐにまた敬礼の形に戻ってしまった。
それもそうだ、この組織のトップが来たのだから。

「なんじゃハル...もう敬礼をやめさせたんか?」
「身体的にも精神的にも疲れてしまったら、この後の訓練ができないと思って...」
「ハルちゃんは甘いねぇ」

軍艦へ続く道に現元帥、大将そしてハルが並んで歩く姿はまさに壮観。
次々に海軍の上層部が乗り込んで行く。
最後にハルが乗ろうとしたときだった。ふと、キツイ香水の匂いが鼻をかすめる。
ハルが振り返ったと同時に目の前にピンクのモフモフ。そう七武海のドンキホーテ・ドフラミンゴが立っていた。

「お、おいっ!天夜叉だ!!」
「一体何をしに...」

ドフラミンゴはいつもの笑みを張り付かせて両手を広げる。見聞色の才能がある者にはハッキリとその両手にかかる糸が見えた。

「久しぶりだなハル。会いたかったよ...フッフッフッ」
「なんの要件だい?ドフラミンゴ殿」
「いいやぁ?ちょっと暇つぶしになぁフッフッ」

グンッと勢いをつけてハルの周りにいる海兵達に向かって腕を振る。が、その攻撃は海兵達に当たることはなかった。
ハルが腕を振り切る前にドフラミンゴの手をぎゅうっと握っていたからだ。

「...ハルちゃん〜?何やってるんだい?」
「....」

ボルサリーノもサカズキも動揺を隠せていなかった。ハルは2人の方へ顔を向けてニッコリと笑う

「いえ、周りの人を傷つけたくなかったので」

ドフラミンゴも目を見開いてハルに握られた手をどうにか自由にしようとするが、できなかった。
自分がいま手を振ればハルの白い手はボロボロに切れてしまうからだ。
ハルはドフラミンゴが抵抗しないのをいい事に話をふる。

「ねぇ、ドフラミンゴ。周りの人じゃなくて俺を殺してはくれないかい?」

俺は死にたくてたまらないんだが...と言うとついにドフラミンゴは溜息をついて能力を解く。

「殺せる訳ないだろうが...フッフッ相変わらず困った子だ」
「なぜだい?簡単だろう?」

不思議そうに頭を傾げるハルを見てドフラミンゴは笑う。

「そうそう、今日は直談判に来たんだよサカズキ....俺も政府に少し用事があってなぁ...」
「どうせ断っても乗り込んでくる気じゃろうが...ハルに手を出したら骨の髄まで焼き払ってやるけぇ、覚悟しとれよ」

おー、怖ぇー怖ぇーなんて言いながらドフラミンゴは軍艦に乗り込む。
ボルサリーノはハルの両肩に手を置いて固定し項垂れながらのお説教タイムに入っていた。

「なんであんな危ない事をするんだぃ?あっしは冷や汗かきまくりだよぉ」
「だって...」
「だってじゃないよぉ?あのままハルちゃんの綺麗な手が切り傷だらけになってたらあっしはどうしたら...」
「別に何もしなくても...」
「それは聞き捨てならんのぉ」

最終的にはサカズキも入ってのお説教になってしまった。
そして、どういう訳か政府のお役人と同じ船にボルサリーノとサカズキが、もう一隻の軍艦にハルとその部下、そしてドフラミンゴが同乗する事になってしまった。
果たして無事に会議に行けるのか
……To be continued
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