短編

□あなたは毒
1ページ/1ページ

「んっ…、あぁぁっ!!」
何度目かわからない絶頂感に意識を飛ばしかけていたが腰をつかむ強い力と飛ばすことを許さない男の理不尽さで一気に引き戻される。
「ちょっ、とは待ってよ!!んんあっ!」
「フフッ、こーゆーのが好きなくせに」
奥までついて抉るような、獣を連想させる行為。
辞めたいのにやめられない。この男から離れられない。
無理やり変えられる体位も体格差を気にしないプレイも私の体を蝕む。触れたところすべてが黒く変色したみたい。何も知らなかった私はあなたに飼い慣らされ、汚れていく。
「くっ……、締めてんじゃねェ…」
苦しそうな声、あなたの合図。
早くなる律動、高くなる声。
「あ、もうだめぇっ!!」
「出すぞっ……」
同時に果てると体の奥に熱いものが注ぎ込まれる。
どす黒い男から出されるこれは毒なのではないかと思うほど中毒性があって、苦しくて、悲しい。
「じゃあな」
さようなら、なのかまたな、なのかわからない別れの言葉を聞き流してベッドに寝そべる。
「………好き」
あんなに激しく絡み合うのに目線は合わない。私のことなんて考えてもいない、そんな顔が悲しい。
いつでも逃げれるよう施錠されてない部屋。私はここから出られない。
体に仕込まれた毒なのか心に根を張った想いなのか…。
いつ来るかわからないあなたをここで待つだけ…………。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ