短編

□仲直りのチョコレート
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同僚で彼氏のローが女の子からチョコを渡されるのを目撃するのは何度目だろう。
今日は女の子の浮かれる日、バレンタインだ。
別にいいが彼女ここにいるんですけどー…


「チョコ食いたい」
急に私のデスクに近付いてきて同僚兼彼氏のローが言い放った。
周りの女の子達が可哀想、と見てくる。
全然可哀想じゃないよ、コイツ。
私はあの日のことを許していない。
「貰ってたじゃん。おめー」
「断った。」
「近頃デパートではチョコがたくさん売ってるよ」
「今日お前の家な」
話 を 聞 け !!
勝手に決めると自分のデスクへ戻って行った。
本当に買ってないんだけど…。





「お疲れ」
「お疲れ様。」
会社から一緒に帰るしどうするべきだろう。
いや、でも私は怒っているんだ。
「チョコに合うワインでも買っていくか」
「………チョコないよ。」
ちゃんと言ったのに無視してワインを選び始めた。
高校生の頃から付き合っていて同じ会社に就職しているがこいつは自分勝手だ。毎回振り回されるこっちの身にもなれ。喧嘩だってローの自分勝手さがいけないのに。
「名前、こっちよりこっちの方が好きだろ?」
二つ持ちながらうーん、と少し悩んで私の好きな方をカゴに入れた。
「もう片方の方が好きじゃん、ロー。」
「あ?いいんだよ」
チーズとサラミもカゴに入れているが全部私の好きなやつだ。
自分勝手のくせにこーゆーところで私優先。多分ここに惚れてるんだろう。
「ロー、チョコ欲しい?」
今回は私が折れよう。もう怒ってあるし。
「いらねェ」
あ、そう。
そうかよ!!
ごーいんぐまいうぇい過ぎてわからねぇ!!
ふつふつと怒りが湧いてきたが嫌な空気にしたくなくて黙って歩いた。


有り合わせのもので軽いご飯を作って食べるとワインを開け始める。
「名前、悪かったよ」
「なにが?」
チータラを咥えながらローの方を振り返ると紙袋を差し出してきた。
てっきり女からもらったものだと気にしていなかったが、まさかの私宛?いや、ローの場合女からもらったのを私に渡している可能性もある。
「なにこれ?」
「開けてみろ」
疑いながら包装を解いて開けると前回の喧嘩の原因がここにいた。
「す、スペシャルチョコプリン!」
この前ローが来た時風呂から上がったら空になっていたプリンが、今目の前にある。1日20個限定で、女の子が朝から並ぶチョコプリンが。
「ふっ、ふふ!ロー、並んだの?」
口を抑えて笑うと頭を小突かれた。
だってあのローが。
きっと仏頂面で並んだのだろう。
「詫びだ。」
「気持ちが嬉しいよ、ありがとう。あんなに怒ってごめんね。それと、意地張ってチョコ用意しなかったのも…」
私ばっかり意地張って馬鹿みたいだ。
同い年なのに全然幼稚な自分が恥ずかしくて俯くと先程より小さい包装された箱を目の前に出された。
「一緒にチョコが食いてェ気分だった」
少し頬を赤くして顔を逸らしているのは照れだろう。自分勝手のくせにしっかり私のことを考えているんだ。
「ロー好きっ!」
隣にいるローへ抱きつくと少し体を離して顎を掬われた。
「お返しは身体で、な?」
「んっ……」
優しい口付けに改めて愛を感じた。

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