短編

□もやもや
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「おい、たしぎィ!!!」
「はい!スモーカーさん!!」
面白くない。大人気ないのはわかっているけど...。
「変な顔してないで行くわよ。」
「ヒナぁ!」
私はヒナの2年後に入った。入った時からの上司で良き相談相手のヒナ。今ではお互い大佐になった。
今日は上のミスでスモーカーの船と見廻りの航路が全く一緒になってしまったのだ。軍艦が仲良く2つそろって進んでいく姿はそこらの海賊からしたら怖いだろう。
隣の軍艦の甲板で暇そうにしているスモーカーを見る。たしぎがコーヒーを零しているからきっとまた怒鳴り声がするだろう。
「たしぎィ!!!!!」
「すっ、すいません!」
少しだけスモーカーを見てからヒナに続いて船内へ入る。何枚かの書類を作り終わって外へ出ると何事もなくもう帰り道だそうだ。
「ここからあっちまで行けるかな?」
「海に落ちたって助けないわよ」
「やめときます...」
スモーカーたちの船までジャンプしようかと思ったけどさすがに無理だな。
スモーカーは特に私に興味を持っていない。冷めた男だ。付き合っていることは内緒だけどヒナだけが知っている。
「スモーカーは私に興味無いのかね」
「あら、さっき熱烈な視線を送っていたわよ。」
まさか。笑い流すとまたスモーカーを見る。たしぎたしぎ、ってたしぎちゃんいいなぁ。側にいられて。
もやもやしていると海軍本部へ戻ってきたようだった。
「んーっ、何も無いと暇で疲れちゃう」
「ふふっ、報告書を作ったら帰っていいわよ」
嬉しいことを言ってくれるヒナに抱きついてお礼を言うと部屋へこもって直ぐに完成させた。
「やれば出来るでしょー!」
「ええ。ヒナ驚愕。」
「お先失礼しまーす!ヒナも早く休んでね!」
また明日、と言って別れると早歩きで本部から出る。
「終わったか」
「うおっ!あ、スモーカー」
バカにした顔をすると葉巻を咥えながら近付いてきた。
そのまま帰ろうと歩き出す私についてくる。家は一緒だから普通のことなんだけどスモーカーがこの時間上がるのは普通じゃない。
「どうしたの?早いね」
「あぁ、ヒナに帰れって言われたんでな」
「あ、そう」
「あとお前を甘やかしてやれ、って」
にやりと笑った。ヒナに嫉妬してたことがばらされたんだろう。なんてことをしてくれるんだ。恥ずかしさで顔を背ければ鼻で笑ったのが聞こえた。
「...すいませんね!」
「たしぎは部下でそれ以下でもそれ以上でもねェよ。分かってんだろ?」
「ん。」
分かっているけどもやもやしてしまうんだ。20代も後半になったし少しは大人になったはずだけど追いつかない心に恥ずかしくなる。
「ていうかこんな風に一緒に帰っていいの?バレたくないんでしょ?」
「俺はそんなこと言った覚えねェぞ。」
確かに言われてはいないけど態度が、なんかそう思わせる。家に着いたから二人で一緒に入る。
すぐさまジャケットを脱ぎ捨てるスモーカーに怒りながら片付けてあげる。
自分のもハンガーにかければ葉巻を消しているスモーカーに近付く。抱きついてもいいかなー、なんて甘いことを考えているとスモーカーも近づいてきて壁に押し当てられた。
「いたっ...。んっ..はぁっ...!」
噛み付くようなキスを何度かすると離れていく。こんな夕方から珍しい。普段はそーゆー時にしかしないくせに。だけど一気に心が晴れるんだから単純だ。
「機嫌直ったか?」
「もっと...」
離れていきそうなスモーカーの首に腕を伸ばして抱き付けば口角を上げて悪そうな顔をした。
「煽ったのはお前だからな。後悔するなよ」
そう言うと寝室に連れていかれて何度も求められた。



(あーっ!キスマークついてる!)(俺にも独占欲はあるんだ)(嬉しい!!大好き!!)(あァ。俺もだ。)

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