短編

□祝いましょう
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「祝いましょう。祝って差し上げましょう!!はぁーはっはっ!」
「落ち着け...」
ブルーノズ バーの掃除をしながら高笑いをしたらブルーノさんに呆れられた。

私の主が1週間後に誕生日だと聞いたのは1週間前だ。つまり今日。この店はガレーラが貸切にした。どうせ来るのはガレーラだけだから適当に掃除をしたら飾り付けだ。
「うっは!似合わない!」
可愛い飾り付けをしながら仏頂面で入ってくるだろう主を思い浮かべる。
きっといつもよりお酒が出るだろうからブルーノさんは補充と新しいグラスを出すので忙しそうだ。

昼過ぎから始めた準備も気が付けば17:00になっていた。周りを見渡せば風船やら紙で作った飾り物で随分可愛らしい。
満足したからブルーノさんの料理を手伝う。盛り付けるだけだけど。

30分もすれば彼らの騒ぐ声が聞こえてきた。主は腹話術のせいで高い声だからわかりやすい。
「おかえりなさい!誕生日おめでとうございます!!」
私はここでルッチさんをおかえりなさい、と迎える。ただいま、なんて可愛らしいことは返してくれないけど頭を叩く勢いでポンポンしてくれるから満足だ。
「....そうか。今日はルッチの誕生日だったっぽー。」
少し驚いた顔をしたルッチさんを席へ移動させる。いつもより全然多いメンバーに驚きながら席を作る。なんとか全員座らせるとアイスバーグさんが祝福して乾杯だ。ルッチさんの隣に自然と空いている席。
「お前はここだっぽー。特等席を差し上げよう」
「え!いらないっす!凄くいらないっす!!」
ギロ、と睨まれる。眼力で人を殺せるんじゃないかな。急いで隣に座ると満足そうだ。あぁ、ブルーノさんごめんなさい。手伝えそうにないです。
ルッチさん好みのお酒を並べているからかめっちゃ機嫌がいい。むしろ怖いよ。
「どれ飲みますか?まぁ、自分でしてください」
「聞いといてなんなんだ。あれをルッチにいれろっぽー」
溜息をつきながら取りに行く。よりによって一番端にあるのを選ぶのだから主のドS度が伺える。
「はい、持ってきて差し上げましたよ。お礼は?」
上から目線で言うがルッチさんには効かない。何も言わないルッチさんの代わりに肩のお友達が手を上げた。
グラスを出してきたルッチさんに注いであげると無言で飲む。どういう教育されてきたんだこのくそ猫。
「名前が盛り付けてくれたんだよ」
そんなことを言いながら料理を運んできてくれるブルーノさんに謝る。
優しそうな笑みを浮かべてくれたから大丈夫だろう。

程よく酔い始めるとアイスバーグさんがオシャレな箱を取り出した。
「誕生日おめでとう。」
そう言いながら渡されると少し嬉しそうな顔をした。
アイスバーグさんが渡し終わると次はカクさんのようだ。
「ルッチにはこれしかないと思ったんじゃ!あ、おめでとう」
おめでとうがこんなに後付けだなんて。開いてみろ、というカクさんの言葉に流されてルッチさんが開くと鳩の着ぐるみ型パジャマだった。
「ありがとうだっぽー。うちの可愛い下僕に着せるっぽー」
「明らかに男性サイ....、なんで私サイズなんですか...」
「ルッチが着るわけないからじゃ!」
そんなものあげるなよ。私に着せる前提で買うなよ。喜ぶなよ!!
「あー、おめでとう」
そう言いながら投げつけたパウリーさん。包装されていないし。
「別にいいから借金返済しろっぽー」
「素直に受け取りやがれ!」
ルッチさんのそこそこ好きな銘柄が書いてあるお酒は彼にとって大出費だったのだろう。
ルッチさんが受け取れば嬉しそうにはにかんだ。
その後も職長、後輩が渡していく。
ほとんど全員が渡し終わると視線が私に集まる。
いや、あるんだけどタイミングをはかっていたら完全に出遅れた。
「ちょっとトイレ!」
「聞きたくないっぽー」
困ったからトイレ宣言をして立ち上がる。ブルーノさんのところへ行ってプレゼントを取るとまた戻る。ああ、もう視線が恥ずかしい。
「た、誕生日祝ってやってもいいですよ!」
「どこから目線だ。」
もっと素直に伝えるつもりだったのになんて言い方だろう。とりあえずプレゼントは投げつけた。
「開けていいか?」
頷けばカクさんのは適当に破ったくせに私のは丁寧に包装を剥がし始める。
「財布か?」
「はい、ルッチさんのもういつ千切れてもおかしくない感じだったので」
ルッチさんはこだわりが強そうに見えて気にしてないところも多い。その一つが財布だ。もしかしたら大切で変えたくないだけかもしれない。
「ありがとう。ルッチは大切にするっぽー。」
「きゅっ、給料3ヶ月分ですので!!」
「明らかに使うとこ間違えてるぞ!??」
パウリーさんからツッコまれたけどそれどころじゃない。心臓が動きすぎて痛い。無駄にかっこいいんだからこの人はずるい。
「酒も、料理も、プレゼントも全部嬉しいっぽー」
「まだありますよ!」
そういってブルーノさんにケーキを急かす。
ケーキは私がデコレーションしたのだ。ブルーノさんが持ってきたケーキを見てみんなが感心したような声を出す。
「ルッチさんとハットリです!」
「見ればわかる。」
「ほかの人みたいな反応しろや!」
つまらない男に怒るとニヤリ、と笑った。あ、これはやばい。
「すごいと思うっぽー。

嬉しい」
少し間をあけて小さく地声で囁かれた。これだけでも真っ赤になってしまうのにルッチさんの唇が私の唇に触れたのだからもう身体中が熱くなった。


(は、ハレンチな!!)(ルッチのだから何してもいいんだっぽー)(カムバック人権!!)
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