短編

□上着
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今日は外で授業だから着替えて出た瞬間水をかけられました。
「ほんっとに悪ぃ!!俺の着て!」
体操着はびしょ濡れだし外寒いし卒業前の先輩のを借りて風邪ひかれたら嫌だし今日はダメな日だ。
「大丈夫なので!」
謝り倒してくる先輩から逃げるようにグラウンドへ急いだ。

体育教師のスモーカー先生が来るとみんなが静かに並ぶ。人数確認をすると普段ならすぐに授業が始まる。
でも今日は違った。
「名前、なんだそれは?」
「こっちが聞きたいです。ミラクルクリーンヒットでした」
着てても寒いから仕方なく脱いで木に掛けておいた上着を指さす。今の時期で半袖とか頭がおかしい子だ。小学校で1人くらいいる年中半袖の子みたいだ。スモーカー先生には変な子だと思われたくない。可哀想なくらい濡れてるのが見えたのかため息をこぼした。
「誰だ?」
「.......」
「言え。言わないなら態度が悪いとして成績g「エース先輩とサッチ先輩です!」...俺のクラスの生徒が悪かった」
アイツら!と怒りながら上着を脱ぎ始めるスモーカー先生。そんなっ!刺激が強いです!
「これ着とけ。あいつらのせいで風邪引かれたらたまったもんじゃねぇ」
「えええ!先生が寒そう!」
「別に平気だ。風邪をひくほどヤワじゃねぇ」
私の前まで来て肩に着ていたジャージの上着を羽織らせてくれたスモーカー先生。ふわっと葉巻の香りがした。スモーカー先生に包み込まれているような感覚になって妙に恥ずかしい。
でも今日、いい日かも。

みんなと違うジャージだから目立ちっぱなしで授業が終わった。
用具を倉庫へ片付けに行くスモーカー先生の後を追う。
「せんせ!ありがとうございました!」
「まだ着替えねぇだろ、着とけ」
「なんか先生に包み込まれてるような感じになって照れるんです!最高です!一気にハッピーです!」
熱弁すると呆れたように少し笑ってくれた。
「まあ何でもいいが着ておけ。」
「なんでも良くないです!出来れば本当に包み込まれたい!」
「何の話だ。」
倉庫の整理を少し手伝うと結構時間がやばくなってきた。
「受け取ってくださいー!」
「着とけっつーの!」
「包み込んでくださいー!」
誰もいないのをいいことに葉巻へ手を伸ばすスモーカー先生。
「葉巻より私を吸ってください!」
「若い女が何言ってんだ!」
葉巻を落としかけて明らかに動揺した。
「ぎゅーってしてくれたら嬉しくて死んじゃいます!」
「じゃあしねぇよ!」
「死なないです!だからどうですか!?」
少し迷ったような顔をしたスモーカー先生。案外いけるかもしれない。
腕を広げると片手を引っ張られた。
「んぶっ!
うわぁー!いいんですか!?匂いが濃い!きゃー!幸せ!!」
頭を胸板に押し付けられてもう片方の手はしっかりと体を抱きしめてくれる。がっちりした体が良くわかって照れる。
「はいはい。予鈴が鳴るぞ。遅れるなよ。」
そう言うと同時に予鈴が鳴った。今私は外にいる。教室は2階。私は足が遅い。つまり
「いやぁぁああああ遅れるぅううううう!!!!」
「頑張れよー」
「今の言葉で頑張れる!!スモーカー先生愛してるー!!!」
ひらひら手を振るスモーカー先生がだんだん小さくなっていく。次はクザン先生だから遅れてもまぁ大丈夫だ。だけど全力疾走。大好きなスモーカー先生に頑張れって言われたしぎゅーしてもらえたからね!
「うっひょーい!!あいむ そー はっぴぃぃいー!!」




(あらら、なんで遅れたのよ?)(ちょっと色々)(スモーカーの服着て?おじさんもまぜなさいよ)(何も無いですから!!)

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