短編

□ゲームアプリの彼
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最近ハマっているゲームアプリは好きな人とチャットをしながらできるものだった。現実の世界で友達を作るのが苦手な私でもこのアプリの中では友達ができた。特に仲がいいのはAという名前でしている同い年の男子。チャットもよくしている。
[今日は曜日クエスト行かない?]
家に帰ればだいたい同じ時間でログインしているAとクエストに行く。
お互い結構強いから一緒にするのが楽しくて好きだった。
しばらくクエストをしていると話したいことがある、と言われた。
「どうしたの?」
[俺ら、ログインする時間同じだよね。]
「そうだね、近くだったりして!」
ずっと思っていたことだ。近くの高校生なんじゃないか、と。期待もあるのかもしれない。
[近く、じゃなくて同じじゃね?]
「まさかー!そんな偶然ある?」
[いや、なんか確信してる(笑)]
「じゃあどこ?(笑)」
答えるわけないのはわかっているけど気になった。
[グランドライン高校]
えええええ!?本当に一緒だった...。しかも同い年だから同級生!
「一緒だ...」
[ほらな!ライン交換してるかな?]
「してないよ、男子のなんて持ってない!」
自分で言って少し悲しくなった。女子のも全然持ってないけどね。
[じゃあ俺が第一号だ!]
一緒に送られてきたQRコードを読み取る。エース...エース!?プロフィール画像もエース兄弟だ。間違いない。学校のアイドルって言われてるあのエース...。
[改めてよろしく!俺のこと知ってる?俺はまだだれかわかってないんだけど]
「知ってるよ!アイドルだもん!」
[勝手に言われてるだけだからやめろよっ(笑)]
「なんか、すごい人とゲームしてたんだね私!」
[全然すごくねぇよ。名前教えて]
あのアイドルとずっとゲームをしていたなんて夢みたいだ。誰にも言えないけど少し憧れていたのは事実だ。周りにはいつも派手で綺麗な女の人がいたから近付くことも出来ない。できたとしても話せないんだけど。そんな人とラインしてる!幸せ!
でも私の名前は言えない。ガッカリされる。
「んー、言いたくない、かな」
[なんで?]
「ガッカリされるから」
[しねぇよ(笑)あ、じゃあ電話しようぜ!声で当てる!]
電話番号が送られてきたから呼吸を整えてかけるとすぐに出た。
『もしもーし!』
「はい!」
『なんで敬語?』
緊張しちゃってダメだ。声が震える。
「なんか、緊張して」
『俺も緊張するだろ!』
ハハハ、と楽しそうに笑う声が聞こえてきた。
『俺と同じクラス?2組なんだけど』
「ちがうよ」
『一緒だったら良かったなー』
ドキッとした。そーゆー意味じゃないのは分かりきってるんだけど胸の高鳴りが治まらない。
しばらくクエストのことや学校のことを話すといい時間になっていた。
『よし、じゃあ明日な!もう声覚えたから!』
「うん、会えたらね。楽しかった、ばいばい」
寂しい電子音がして繋がっていたものは切れた。
明日を楽しみにしながら髪の毛の手入れをいつもより丁寧にした。


「おはよー!」
「おはよ。」
唯一の親友が声をかけてくれた。
玄関にエースくんはいない。
「なんか嬉しそう!」
「え、そうかな?」
なになにー、とニヤニヤしてくる親友を適当な言葉でかわして教室まで行く。廊下にエースくんがいた。周りにはいつものように綺麗な子達がいたけどエースくんの目はずっと何かを探している。知ってるけど知らないふりをして話さずに通り過ぎる。一瞬見られた気がした。

「おっ、名前!手伝ってくれねーか?」
担任のシャンクスに見つかった。なんで私はこの人の雑用をしているのだろう。
「いいですよ。」
二人で教室を出る。エースくんはまだキョロキョロしてた。
「でな、重いかもしれねぇんだよ。」
「は、はい。いいですよ。」
「あ!!!お前!!!」
ここで話しかける?というタイミングで話しかけてきた。仕方なく返すとエースくんが指を指して反応した。
「.....正解?」
「......うん」
自信満々そうだったのに答えなかったら不安そうな顔をした。
「ほら!当てれるって言っただろ?」
「だあれ?」
「ほら、隣のクラスのネクラオタク!」
ゲームしたらいつの間にかそんなふうに言われるようになった。
「へー、オタク...。通りで強いわけだ!俺も同じゲームしてんの。じゃあ俺もオタクだな。嫌だろ、離れて。」
女達をかき分けて私の方へ来る。
「よし、行くぞ!シャンクス!重いなら雑用は男にやらせろよ!」
そう言うと私の手を掴んで走り出した。
「えぇぇえ!?」
めっちゃ速いからついて行くのに必死だ。
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