キミと航海

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あ、やばい。

これは、死ぬ。


「調子に乗ったな…!だが、ここで終わりだ!」
ほかのクルーをキッドたちに任せてボスの首を取りに来たのだが本気で戦って見事勝ち、安心した途端ラスボスが現れた。
棍棒で思いっきり殴られると立つ気力もなく、座り込んだまま振り下ろされる腕を見ていた。
また、考えなしだと笑ってくれるだろうか。
お前は、と呆れてくれるだろうか。
私がいなくなってもキッドは大丈夫だろうか。

妙にトゲトゲしている棍棒が目の前まできた時後ろから大きな影が私を包んだ。

「させるかァ!!」
キッドが武器で作った腕を棍棒に当て、逸らしてくれた。
その隙にワイヤーとヒートが私を回収してくれた。
「……ははっ、死ぬかと思った」
キッドとキラーが先頭に立って戦っているのが見える。

また、迷惑かけた。
「ごめんっ……」
発砲音や武器の当たる音でかき消されたけどそれでいい。こんな言葉じゃ足りないから。



「おい、歩けるか?」
「うん。」
捻挫したであろう足を引きずりながらキッドあとをついていくと途中で担がれた。
「何から何まですいません………」
でも、嫌わないで。
そんな想いを込めてぎゅっと抱きつけばため息が降ってきた。

船につくと医務室でやっと下ろしてもらえた。
右足首の捻挫の応急処置をしてもらうとあとは自分でやる、と消毒と包帯を受け取った。他にもけが人がいて大変そうだし。
「貸せ」
キッドにひったくられると一番傷の深い腕へ直に消毒をかけてきた。
「痛い痛い痛い痛い!!!」
「心配かけた罰だ。」
「ぎゃああああ!!助けて!!誰かー!!」
本当に痛くて助けを求めているのに周りは笑うだけ。
なんて酷いんだ!
「キラーァアアアアアア!!」
怪我はしてないキラーが船員を見に来た。こんなに騒いでいるのに素通りしようとしたからキラーの腕を拘束されていない腕で掴む。助けてください。
「おい、キッド。泣きそうだぞ。
もっとやれ。」
「ちょっ!!」
まさかのキッド派だった。
床に座っていたキッドが顔を上げてニヤリと笑った。
「悪魔!!!!っぁあああああいたい!!!!」
「今回も、お前が悪い」
「反省してますぅうううう!!ごめんなさいっっ!」
フッと鼻で笑うとキッドがやめてくれた。
「ったく、一人で突っ走るな」
「うぁい」
「泣いてんじゃねェよ」
「まだセーフだから!!」
瞳に溜まった涙を流さないよう瞬きをせずに乾かしているのにキッドが親指で拭ってしまった。
「嫌わないで……」
呆れたように去っていったキラーを見送ったあとキッドにしか聞こえない声でそう呟いた。
「嫌ってねェだろ」
消毒したところに包帯を巻き終えたキッドが立ち上がって私の頭を撫でた。
でもキッドはずっと不機嫌な顔をしている。
「なんだよ?」
行くぞ、と私の手を引っ張ろうとしたキッドの手を拒否した。
「嫌ってないならキスして…」
「後でな」
わがままを言っているのは分かってるし部屋に行けばしてくれるのも分かってるけど今すぐにして欲しい。
じわっと滲んできた視界。
袖で涙を拭おうと腕を上げると今日一番大きなため息が聞こえてきた。
ごめん、困らせて。
ごめん、わがままで。

拭ってもまた溢れてくる涙が恥ずかしくて必死にゴシゴシしているとキッドが腕を掴んで顔から遠ざけた。
「はなしっ……え?」
離して、と言おうとしたのに途中で遮られた。
まるでキスされたような感覚。
…………え?
驚いて涙が止まったから顔を上げると久しぶりに真っ赤な顔をしたキッドがいた。
「さっさと行くぞ!!」
照れて乱暴にいうキッドが可愛くて後ろから抱きつくとそのまま部屋まで引きずられた。

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