キミと航海

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「海賊船があるぞー!」
「お、新世界初海賊!」
やる気満々だ。
「お前、手大丈夫か?」
「うん!」
心配してくるキッドとマスクの中ですごい顔をしているであろうキラーを笑顔で振り切る。
船を近付けると砲撃してくる。
「リペル!」
全て戻っていく。いい能力だ!
諦めたのか近付いてきて乗り込んできた。
「っしゃ!Lv.2!」
走って近くの敵から倒していく。楽勝だ。
「食らえっ!」
敵の剣が振り落とされる。避けるがワンピースが裂けた。キッドが買ってくれたのに。
「何してくれとんじゃー!!!!」
太ももに付けていたホルダーから短剣を二つ取り出す。
振り回してくる剣を弾いて攻撃のすきを狙う。少し疲れが見えてきた。
「もらったぁ!ワンピースの恨み!!」
手では剣を弾きながらパワーを込めた蹴りを繰り出す。一発KOだ。
「名無しさん、無理するなよ。」
通り過ぎる時にキラーが呟いていく。
「任せろー!ママー!」
振り返りもせずに走り去っていくけどきっと微笑んでいるのだろう。
「っとあぶね!」
後ろから剣が飛んでくる。
「悪ぃ」
犯人なんて見なくてもわかる。
私の短剣もキッドの元へ行こうとする。必死に握りしめる。
「オラァ!!」
「うぇ!?うっ!」
びっくりしたのも束の間棍棒で殴り飛ばされた。
「名無しさん!??」
「うはっ、見てなかった!」
久しぶりに殴り飛ばされると笑えてくる。奥で文句を言うキッドにブイピースをしておく。
「ナメた小娘だなぁ!!」
「パワーボール。」
指の先から数発出す。
「うぅっ!食らえ!」
がむしゃらだ。当たるわけないでしょ。
「あのねぇ、そーやって適当にまわすものじゃないの!!」
上からふってくる棍棒をパワーを貯めた片手で受け止める。
「う、動かねぇ!」
ふっふっふ、と不敵に笑いながら棍棒を握りしめる。
ーーーーメキメキッ バキッ
使い物にならないくらいボロボロになる。青い顔をして目を見開く敵。
溜めたパワーのまま腹を殴りつければ自分の船へと帰っていく。
見届けると近くにいた敵を適当になぎ倒していった。
完全優勢のままキッド海賊団の勝利だ。

「おい、お前なぁ!!」
ガッと顔面を掴んでくる。
「あだだだだ!!!無理!!!」
半泣きになりながら手を剥がそうともがく。
「戦い中に気をそらすと命が危険だろ!!」
「短剣が飛んでいきそうでぇー!」
「あ?あぁ、俺の技か。ここにいるなら慣れろ。」
「んな、無茶な!」
ギリギリと力を込めてくる。
「はぁぁあああい!!わかりやしたぁ!!」
ふんっ、笑うと手を離してくれる。
「小顔になった気がする...」
「お、やっと人並みか!」
「え、人以上にでかかった!?」
「さぁな。」
顔大きいのバレてる...。ムニムニと顔のマッサージをする。
「なんだそれ?」
「小顔マッサージ。」
「ははっ、冗談だ。顔、小せぇぞ。」
笑いながら言われたって信じられないけど楽しそうでなによりだ。
「あ、そだ。ワンピースごめん。」
「気にするな。」
あの後吐き出された血までついたからもう捨てるしかない。
「また買ってやるよ。」
「ありがと。」

戦闘前に風呂に入った私は仕方なく血だけ洗面所で洗い流す。
「うおっ!?」
「あぁ、ごめん。気にせず脱いで。」
見られて困るものなんてないから入ってます、という札を置いてこなかったら私の次に入るキッドが来た。
「あほか。血がついたのか?一緒に入る手もあるぜ?」
鏡越しに目が合う。ニヤニヤしている顔がむかつく。
「あほか。もう終わったから出るよ。疲れたし先に休むね。」
あほか返しをするとバイバイ、と手を振って部屋に戻る。
掛け布団の上に大の字で眠った。


~~~~~~~~~~~~~

部屋に戻ると名無しさんはベッドを占領して寝ていた。本当に大、の字で。
「名無しさん、起きろ。」
揺すってみても起きない。俺が使っていた服をワンピースにしているから脚が丸見えだ。白い肌が綺麗だった。
脚に指を滑らせてみると擽ったそうにんんっ、と声を出す。起こすと面倒なので
名無しさんの身体を転がして自分のはいるスペースを作るとそこに横たわる。
「名無しさん」
うまくこちらを向いた名無しさんを抱きしめると擦り寄ってくるが少し離して顔をよく見る。長いまつげ、綺麗な形の眉、少し厚めの唇。
例え女と体を重ねようが感じたことの無い気持ちが芽生えていた。
自分らしくないから認めたくない。でも名無しさんは真っ直ぐにいつでも伝えてくる。生きてる人間の特権だと名無しさんは言う。伝えられるうちに伝えたい、と。
多分その方が後悔しないのだろう。多くの後悔を背負って生きている名無しさんは人前で明るく振る舞う。それがたまに痛々しい。
ハァ、とため息をつくと考えるのを辞めて目を閉じた。

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