キミと航海

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溺れた日から私はキッドにべったりくっついていた。
キッドもそれを受け入れてくれていると思う。風呂とトイレ以外は常に一緒にいても文句を言わない。
言えないのかもしれないけど。
私が泣いたことには特に触れてこないが気を遣われているのはわかる。てか、気を遣うってことを知ってた事に少し驚いた。


「ボートもう完璧だ!!」
着地は諦め、操縦の練習を少しすると乗りこなせた。
「よかったな。まあ当分使えないけど。」
天竜人の事件があったり、頂上戦争があったりで賑やかだったシャボンディ諸島が元に戻り始めたらしい。なのでキッド海賊団はシャボンディ諸島に逆戻りをして船のコーティングをしてもらう。
「にっんぎょー!たっのしみー!ボインボイン!!」
「ボインボイン!!」
クルーと一緒に男のノリで人魚を楽しみにする。ケイミーも人魚だが、あんなに可愛い子がたくさんいるのは楽しみだ。
「お前は女だろ...」
側で見ていたヒートに呆れられる。
「名無しさん、シャボンディ諸島で買うものあるか?」
「えー、それ聞くぅ?し・た・ぎ!」
「お前必要だったのか。」
「てめェどーゆー意味だ!!」
キラーの真面目な質問に真面目に答えただけなのにヒートったら失礼。
服は初日のしかないから普段はキッドの服を着ている。ワンピースとしてだ。
「服も買わなきゃだろ。金は?」
ドヤ顔でポケットからお金を出す。150ベリーだ。
あれ、みんな黙っちゃった。
「ほとんど無いんだろうなとは思っていたがこれは...。まあ買ってやる気だったけどこれからは知らねぇからな。」
「やったー!キッド大好き!!」


午後になるとシャボンディ諸島についた。
「前聞いた時は一週間だと言ってたな。これから6日間は自由行動。最後の1日は食料の調達、消耗品の買い足しだ。」
ホテルの名前を伝えると各自バラバラになる。

「まずは荷物を預けてコーティングだ。その後に買い物な。」
2人で街を歩く。キラーはヒートたちと行ってしまった。前から決めていたらしい評判のいいコーティング師の元を訪ねて船をお願いする。
やはり一週間だそうだ。


さりげなくキッドと手を繋ごうとしたら振りほどかれた。
まぁ、超新星と言われている私たちが手を繋いでいる場面はなかなかにシュールだけど、そんなに嫌がらなくてもいいじゃないか。
頬を膨らませていると下着屋さんを見つけた。
「あの店行きたい!待っててすぐに帰ってくるからね!逆ナンに乗っちゃダメだから!あ、どーゆーのが好み?」
「いいから早く行けよ...」
手をひらひら振るキッドと分かれて店の中へ入る。キッドと同じ赤に惹かれるけどそんな自信はない。下着が必要ない胸ってヒートに言われたしね。白地に赤でハートがかいてあるのにした。基本的に淡い色が好きだから淡い色の下着が揃った。
キッドのゴテゴテ財布からお金を払う。スタッズが痛いっす。
「お待たせー!帰ったらファッションショーしようか?」
「見る価値があるのか?」
憎まれ口を叩きながらもしっかり荷物を持ってくれる。
「あるに決まってるじゃん!」
「ねぇーだろ。」
フハッと馬鹿にしたように笑う。
「あ、このお店可愛いー!一緒にはいろ!」
あまり嫌がらないキッドを引き連れて中に入る。可愛いお店に極悪面のキッド。似合わなくて笑える。
「こーゆーの好き?」
「別にどれでもいい。」
「これは?」
「胸があまりそう」
みんなして二言目には胸!って本当にひどい。見たこともないくせに。

「あ、これ可愛い!」
「似合うんじゃねぇの。」
「え!?ほんと?」
そっぽを向かれたけど耳が少し赤い。
嬉しすぎる。その後も少しは反応をしてくれたけどあれ以上の言葉はなかった。

「色々買ってくれてありがとね!」
満足だ。何件も回らせてくれたし文句言わずに荷物を持ってくれる。
やっぱりキッドは優しい。
「幸せだなー!」
「やっすい幸せだな。」
そんな事ないよ、と言い返して幸せを噛み締めているとホテルに着いた。
キッド海賊団がほとんどの部屋を借りたホテルの前にはキラーたちがいた。
「おかえりー!そしてただいま!何してたのー?」
「あぁ。武器屋を見たり本屋に行ったりした。
服買えたのか、良かったな。」
キッドの指にかかっている可愛らしい袋を見てキラーが言った。
「おれを荷物持ちにする女はお前くらいだぜ。」
「違いない」
キラーがキッドを笑うと先にホテルへ入っていく。
続いて私達も中に入り鍵を受け取った。
「え、一緒?」
「あ?なんだよ、金なし。」
あ、胸もか、なんて失礼なことを言ってくる。
「船は部屋が足りなかったんでしょ!?ホテルは部屋が余ってる!」
「金があるやつのセリフだ。」
先に入っていってしまう。仕方が無いので部屋に入って鍵をかける。
嫌なわけじゃない、むしろ嬉しいんだけどキッドの考えはあまり理解できない。
こういう時こそ私と離れてのんびりすればいいのに。

「キッドに迷惑しかかけてない…」
「今更。」
大きくて広いベッドに腰掛けるとキッドから受け取った袋を開ける。
私が不安定だから出来るだけそばにいてくれるのだろう。
私ばかり甘えて、キッドに息抜きする暇さえ与えてないのかもしれない。
「ごめん…。」
甘えさせてくれるキッドのことは好きだけど自分本位に動いてくれていいのに、優しすぎるんだ、だから私を嫌だと言えない。
心にモヤモヤが溜まって気付くと部屋を飛び出していた。
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