短編

□幸せの青い鳥と不幸な黒猫
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医者として住み着いている島の家へ入ると自分のベッドへ名前をゆっくり下ろす。
「なんで、やり返さねェんだよい?」
こちらを見るわけでもなく発せられた言葉に名前が目線を泳がせる。さっきまで感嘆の声を上げたり嬉しそうにしていたが地上につくと絶望が浮かんでいた。
「名前は?俺はマルコだよい」
「名前…」
呆れたようなため息をつくと今度はしっかり名前を見ながら聞かれたので小さく返した。
「じゃあ名前、何故やり返さない?悪魔の実の力は自分が1番分かってるだろい?」
消毒を脱脂綿に染み込ませながらマルコが聞いたが名前は首を振るだけだった。
「いっ……!」
傷の深いところから消毒していくと目をぎゅっと瞑って必死に我慢する名前。
うっすら滲んできた涙は見て見ぬふりをして手際よく全て消毒を終えると手に青い炎を纏わせて怪我へ触れた。
「っ!すごいっ!」
ガバッと起き上がり傷が薄くなった場所を眺める名前がちょっと笑った。
「次は足を出せ」
言われるがまま足を出すとそこの傷も薄くなる。
無くなりはしないが治るスピードは断然早い。

「マールーコー!!」
包帯を巻かれたりガーゼを貼られたりある程度手当が終わったところで家の外から子供の声が聞こえてきた。
それにあからさまに怯える名前。
「…ぃやっ」
医者をしているマルコにとって来客はいつものことでドアを開けに行こうと歩みだした。
「…なんだよい?」
外ではマルコマルコ呼んでいる声が収まらないのに自分の体は動かせない。
困ったように名前の方を向くと小さな手がマルコのシャツを掴んでいた。
「ここにいる人達はあいつらとは違ェよい」
安心しろ、と頭を撫でられるとハッとして手を離した。
そのまま布団をかぶって顔を隠してしまったのでため息をつくとドアを開けた。
「マルコおせーよ!!あのな、今日はな!」
特別仲がいいのか普通に家へ入りながら話す2人に名前の不機嫌は溜まっていく。
「ここ怪我したんだぜ!?」
なんでも兄弟喧嘩らしくマルコが苦笑しながら絆創膏を貼ってあげるとまた元気に外へ飛び出した。
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