短編

□幸せの青い鳥と不幸な黒猫
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「気持ちわりーんだよ!!」
「かはっ!い、たい…」
町の子供たちに囲まれゲラゲラ笑われている名前は悔しさで瞳に涙が浮かんだ。
「お?泣くのか!だっせー!」
胸ぐらを捕まれグーで殴られると一瞬意識が飛びそうになった。
「さっさと出ていけよ化け猫がっ!」
1番力のある男の子に助走をつけて蹴られると名前の小さな体は簡単に吹っ飛んだ。
ある程度距離が離れたから今のうち、と走り出す。
"化け猫"とはネコネコの実モデルブラックキャットを食べた名前を貶す言葉だった。
「あ、逃げやがった!追いかけるぞー!」
全身が痛くて本来ほどの走り方が出来ないせいで男の子達はすぐに迫ってきた。
捕まえようとする手、馬鹿にして笑う顔、見て見ぬふりをする大人、自分を捨てた両親、名前にとっては全て嫌いだった。
「つーかまえた!」
腕が首に回ってきてそのまま締められる。
「く、、るしっ、、」
「今日こそこいつ死ぬんじゃねーの?」
「ギャハハハ!!死ね死ね!」
目の前が暗くなってきた時、誰かの声が聞こえた。それと共に目の前へ男の人が現れた。
「何やってんだよい」
「やべーぞ、逃げろ!!」
名前を離すと突き飛ばして一目散に逃げていった。
倒れた名前は起き上がる気力もなくゼェゼェ息をするだけ。
それを見ていた男の人が名前に手を伸ばす。
「やっ!!」
とりあえず船へ連れて帰るため抱き上げようとした手を異常なほど怖がり拒絶した名前。だが気にしないのか男の人は軽々名前を抱き上げた。
諦めたように反応しなくなり、長い前髪からは絶望した瞳が見え隠れしていた。
もう抵抗しないと確信すると一瞬で不死鳥の姿になった。
「え……」
「悪いねぃ、俺も能力者だ」
無理やり背中に乗せると大空へ飛び立つ。びっくりしたのか名前が爪を立ててしまいマルコの背中が少し傷ついた。
「あっ……」
「気にするな、大丈夫だよい」
どうせ治せるし、と思いながら丁寧に飛んでいくと曇っていた空がだんだん晴れてきた。
いや、晴れている場所まで飛んできた、のだが。
「うわぁっ!!」
「ククッ、綺麗だねぃ」
初めて聞く嬉しそうな声にマルコの頬が緩む。
顔は見えないがきっと絶望なんて吹っ飛んだ顔をしているのだろう。
見てみたい、そう思いながら少し上昇してもっと綺麗な景色を見せてあげた。
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