悪童

□閉会式
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むにゅ

むにゅ

むにゅ



座ろうとする度にお尻の下に足が滑り込んで来て腹が立つ。

犯人はわかってるんだけど

校長が話しているから後ろを向くことも出来なくて、

横にずれようにも狭い体育館はぎっしりと生徒が詰まっていた。


取り合えずちょっとだけ前に座ろうと、体を前に傾けると後ろから押されて、

前のめりだったから、思いっきり前の人に突っ込んでしまった。

まじで、最悪。

「ごっ、ごめん!!」

「うん、大丈夫だよー」

はぁ、目が笑ってないし。

あまり仲の良くない奴なのに余計に気まずい。

それもこれも全部、

「さっきからお前何なんだよ!」

回りと壇上に上がる校長にバレないようにコソッと振り向いて文句を言っても

「あ、やっとこっち向いた。」

嬉しそうに笑うパッキョンに毒気を抜かれて

名簿順に並ぶ事がある度にこいつはこうやっていつも邪魔してくる。

「もう、やめろよな」

ニコニコ笑ってるパッキョンは心底楽しそうで、何だか面倒くさくなってきて、足をお尻と床の間に入れられてるけど無視して前を見つめる事にした。


反応が無くてつまらないのか

暫く静かだったのに、

いきなり目線が天井にいってビビる。

以外とビビりだから止めて欲しい。


「お前何してんの…」

「え?抱き締めてる。」


後ろから抱き締められた俺は、
パッキョンの足の間に頭がある状態。



明らかに周りの奴等の視線が自分達に集まっている事に耐えられない。

(はずい!!)


「離せ!」

「えーやだ。」

暴れても、起き上がっても何度も何度も
また引き戻されて結局は同じ体勢になる。

「お前、まじで今日なんなの?」

なんか、心配になってきた。

いつもはここまで絡んで来ないのに、
心配事でもあるんかな?

「………」

「………」


何も言わないパッキョンに俺も押し黙る。

「じこ」


「ん?」

体が起こされたと思ったら今度こそ正真正銘のバックハグをされた。

まぁ、さっきよりましだからいいや。

ほっといて壇上に目を戻すと校長はもういなかった。

長かった校長講話もやっと終わるらしい。

閉会の言葉を言うために教頭が壇上に上がって来たから。

終わりが近づき回りもざわざわし始めて…

「ねぇ、」

ビクッ!


完全に後ろから抱き締められていたことを忘れていた俺は、耳元の熱にびびる。

なんで、そんなに耳元で話すんだよ!

「なに?」

更に、耳にキスしてんじゃないかって位
やつの口の感触が耳に伝わる。

「好き。」

「じこ、お前が好き。」

…………。

「はは、真っ赤!」

耳を押さえて振り向く俺の顔が赤いのはしょうが無いと思う。

耳の熱と、パッキョンの笑顔に

周りが立ち上がったことに全く気づかなかった程なんだから。

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