第2章〜セカンド・ラヴ〜

□第1話 祖父の遺言
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カチコチ

時計の針の鳴る音で、青年は目を覚ました。既に日は昇っていて、カーテンの隙間からは光が差し込んでいた。

「ん〜っ...はぁ、今何時だ...?げっ!?9時?!遅刻だっ!」

少年は、部屋を急いで飛び出した。

「おはよう、守人(もりと)。どうしたの?そんなに慌てて」

青年を『守人』と呼んだ彼の母親は、朝食の支度に追われていた。

「どうしてって...。あ、今日じいちゃんの葬式だったんだ」

守人は、乱れた髪を掴んで、ほっと安堵した。
先日、守人の祖父が亡くなった。かなりの高齢だったが、亡くなる前日まで、ピンピン動いていた。だから、初めは祖父が亡くなったなんて考えられなかったが、心臓発作で亡くなったと聞いて、元々心臓の悪かった事を知っていた守人は1人納得した。

「ご飯食べたら、おじいちゃんの神社行って遺品の整理してきて頂戴」

「はぁ?何で俺が...。ってか、じいちゃんの遺品もう捨てちまうのかよ」

守人がそう愚痴ると、母親は、キリッと守人を睨んだ。

「おばあちゃんも亡くなったし、お父さんと相談して、早く捨てる事にしたのよ。もう必要無いもの」

守人の両親は、祖父を心底嫌っていた。祖父は、かなり古い神社『石上神社』の神主をしていたが、守人の父親は神職につかず、サラリーマンとして働いていた。守人の母親とも勤め先の会社で結ばれた。母親は神道に全く関心のない人で、よく祖父と意見の食い違いから言い争っていた。

「ったく、じいちゃんも頑固じゃ無かったら、こんなに嫌われなくても済んだのにさ」

朝食を終えて、祖父の神社へ向かった守人は、父親から渡された合鍵で社務所を兼ねた祖父の家に入った。
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