第2章〜セカンド・ラヴ〜

□第1話 祖父の遺言
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神社に着くと、そこには大きな梅の木と小さな社殿があるだけで、今でも活動している神社とは思えなかった。

「廃れた神社だな...。草が生え過ぎて、社殿にも行けないじゃんか...」

荒れ地と化した社から、大きな梅の木に目を移すと、その木には依り代が張られていた。そのせいか、木から清々しい風が流れているような気がした。

「不思議な木だな。まず、こんなでかい梅の木、樹齢何百年とか軽く行くよな」

『その木は、今から約1500年前に植えられたものじゃよ』

突然聞こえた声に、守人は目を見開く。何故ならその声は、亡くなった祖父の声によく似ていたからだ。

「じ、じいちゃん?!」

『あぁ。そうじゃ。守人、よく来てくれた。時間が無い、簡潔に言うから、その耳でちゃんと聞くのじゃぞ?まず、その木に手を当て、「石上の末裔、逢い人を探したく、この木に願い申す」と言うのじゃ。そうすれば、お前はこちらの世界とは違う世界へ行く。そこで、ある人を探してきて欲しいのじゃ。どんな人かは儂も知らぬ。じゃが、これは代々我が石上家に伝わる伝統じゃ。儂も、儂の父もその世界へ向かったが、「逢い人」には出逢えなかった』

「ちょっと待てよ!いきなり別の世界へ行って、誰か分からない人に会ってこいって言うのかよ?それに、俺はまだ神社を継ぐつもりじゃ...」

『あの神社は、この儀式を受け継ぐ為に過ぎん。石上の本当の役目は、先祖が逢いたかった「逢い人」に出逢う事じゃ』

「はぁ?意味分かんねぇよ!」

守人は、姿見えぬ祖父に怒る。

『頼む。この通りじゃ。お前ならきっとその人に出逢える』
「...」

祖父の必死の頼みに、守人は心折れた。

「しゃあねぇな。ちゃんと戻ってこれるんだよな?」

『あぁ、ただし期限は梅が散る時までじゃ。それまでに見つけられなかったら、また次の代に任せるしかない...』

「絶対見つけてやるよ!俺の子孫まで、こんな面倒事引き延ばせる訳にはいかないからな!」

守人は梅の木に手を当てた。

【石上の末裔、逢い人を探したく、この木に願い申す】

守人がそう唱えると、梅の木は、物凄い風を起こして、守人を包み込んだ。

続く...。

5月13日(土)更新予定
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