成り代わり部屋
□短編集
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U外主人公
シクシクと痛む心を背負い
置き去りにしてしまった友を思い
泣くことすら最早出来ぬ
涙はとうに枯れ果てた
「羽衣狐、騒動は貴様のせいか」
「なんじゃ、珍しく出てきたと思ったら説教か?」
くつくつと笑う羽衣狐は転生する妖(あやかし)
今の彼女の姿は人の世の影の権力者。豊臣の妻か何かだったはずだ
「最近、力ある人が豊臣に召されているそうではないか。主の仕業か?」
「ほほほ。そうじゃ」
「人の、生き肝の美味さなど私には分からぬ」
「勿体ないのぅ勿体ない」
ほほほと笑う羽衣狐を胡散臭げに見やり、そのまま霞のように消えた。
「力あるそなた・・・もはや表舞台に立たない気かえ?」
それこそ真に勿体ないのぅ
妾はそなたの血を浴びる様がとても好きなんじゃがな
「羽衣狐様」
「なんじゃ?しょうけら」
「アレは何者?」
「さての。妾の生まれるずっと前から、京を中心に住まう、つよぉい、妖じゃ。
妾はきっと何度転生を繰り返してもあれに勝てぬ」
「まさか」
「本当じゃ。しかしあの者は最早血を被らぬ・・・勿体ない。そなたも見れば心酔するえ?妾と同じく、のぅ」