成り代わり部屋

□短編集
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side;弁慶


九郎様に似て、真逆の様でもあるリクオ様


猪突猛進の様に兄の為に駆け抜け命を終えたかの方と、


一心に幕府と徳川の為に、友や仲間と戦い散った近藤勇


裏切りの苦しみは双方同じく


しかし、近藤勇と九郎様では生きた年月が異なる。


死の近くでも子供のように真っ直ぐだった九郎様とは違い、結構な年月を重ねて死んだ近藤勇には九郎様にはなかった理知的且つ穏やかで狐狸の化かし合いも可能そうな強かさもあった


お互いの正体を知ったあの日から道場での稽古とは別に対真剣を想定した手合わせを稽古の後に行う

まるで勘を取り戻すように徐々に動きの良さを見せつけるリクオ様にゾクゾクした物が背を駆ける

「最近は夜が遅いと母さんより雪女と首無しのが探る。」


「リクオ様の事をほんに大切に思われているのですな」


「うん。自覚はしてるさ」


さて、と呟いて立ち上がったリクオ様 は皆が心配するからと帰っていかれた。


「九郎様・・・お側に侍るは今暫く御待ちくださいませ。


武蔵坊弁慶、今一度頭を垂れる方を見つけましたゆえ」


空に呟く。


ザアッと吹いた風が、弁慶に許しを与えたように感じられ、弁慶はそっと息を吐いた
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