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□風邪
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街をあてもなく歩いていれば、大江戸薬局の前で騒いでいる二人組
「風邪にはこれでしょう!」
「何言ってんすか先輩!
こっちっス!」
ギャーギャーと騒いでいる二人に店員は笑顔が引きつっている。
「失礼じゃが、二人共違う。
兄さんが持ってるのは月モノの薬で、姉さんが持ってるのは頭痛薬じゃ」
「「え゛」」
「風邪ならこちらじゃな」
「ありがとうっス…ん?」
「助かりました…って」
「「あ゛ー!!」」
「?」
「晋助様の先生!」
「紅き閃光!?」
「は?」
ユラリユラリと屋形船特有の揺れに若干気分が悪くなる。
不覚にも風邪をひいたせいで平衡感覚がおかしいようだ。
「(チッ…情けない)」
風邪など何時ぶりか。
咳き込みながら自嘲する
今ここで真戦組に見つかればいかな自分といえど容易く捕まる事だろう
そう思いつつも、やって来る眠気に抗えず眠りについた。
サラリと前髪を撫でられる感覚に目を開けば、幻覚か随分懐かしい顔がある
「風邪を引いたから看病してくれと主の部下に頼まれたよ。
懐かしいのぅ。昔そなたが子供の頃同じ様に看病したな。
あの時は銀時と小太郎が喧嘩してそなたはとばっちりで川に落ちたんだったか。」
「夢、か。」
「ふ。或いは現(うつつ)やもしれぬ。
さあ今一度眠りに落ちるがよい。」
久しく感じなかった温かい掌に頭を撫でられ、勿体ないと零した。
「?何がじゃ」
「イイ夢なのに眠るのは勿体ねぇなぁ」
「儂が出ているのにイイ夢か。
相変わらず面白い奴じゃ」
「アンタが出てるからイイんだ。
探してたんだぜ?」
「儂を?」
「あぁ…ずっと、な」
「そうか。…その話は後で聞くとして、今暫く眠りなさい。」
あぁ…そうだなと言い切る前に眠った高杉に信幸は優しく笑った
再会迄あと僅か