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□風邪
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小十郎


普段健康に気をつけていた小十郎が風邪を引いたと聞き(序に原因も)


城主に移すわけにはいかないと、人払いをして離れた部屋で一人寝込む姿を見た時、真剣に阿呆だと思った。


気合いで風邪は治らんぞ



カチャリ


「……?」


耳元で陶器の置かれた音に気付いて不思議に思う

徹底的に女中を排した筈

「主は阿呆じゃな。」


聞き覚えのありすぎる声に目を開けようとするも瞼が重く、全身、鉛のように重い


「辛いようじゃが、起き上がらせるぞ」


信幸に凭れかかる様にして起こされ、うっすら目を開ければ粥を差し出す手が見える。


「……?」


「味は保証する。何か食べねば薬も飲めぬ。」


まるで子供のように差し出された先から食べて行けば、信幸が笑ったような気がした。


「小十郎、薬の前に体を拭くぞ」


頷くのも億劫で、されるがまま、人形のようにひたすら凭れかかる。


「(普段は見れぬ光景じゃな)」


そっと汗を拭いながら思う。


伊達三傑が一人、片倉小十郎がかように弱き姿を曝すとは。


薬も飲ませ、布団に横たえ濡れ布巾を額に置いた

さてあとは何があったかと思案すれば、小十郎の口が文字を形作った。

「?」


耳を寄せて、そして聞こえた小さな声に信幸は柔らかく微笑んだ。


「(もう少し側にいろ)」
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