Persona〜The first strategy〜

□episode・08
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視線を集めるワインレッドの髪に、目が冴えるようなワインレッドの瞳。

視線を奪うスタイル。

確かに見れば解る。


(でも、一人よ?)


ウェイターに声を掛けている彼女は一人きりで、周囲にルパン達は居ない。

首を傾げたのと肩が掴まれたのは同時だった。

ルパンか、と咄嗟に振り返った先に居たのは見知らぬ男。

男は値踏みするような視線で此方を見る。


「これはこれは、良い女だな」

「あら、ありがとう。でもごめんなさい、ツレが居るの」


にこりと艶っぽく笑って返すと男は肩を掴んで居た手に力を込める。

少し爪が食い込んで剥き出しの肌に食い込む。

痛みを感じたが、表情に出せば男が付け上がるだろう事は解っていたので笑顔のままその手を振り解こうとする。


(、、、っ、馬鹿力ね、、、)


「まぁそう邪険にするな。少し一緒に飲みたいと思っただけだ」

「、、、レディに対する態度じゃないわよ」


苛立ちからニヤリと笑みを浮かべて囁くと男は不満そうな顔で此方を見下ろす。

その肩越しにボディーガードらしき男達が見えて一瞬だけ迷う。

騒ぎを大きくしてはいけない、と悟ったのと同時に凛とした声がした。


「お嬢さん、彼方でお連れの方が探して居らっしゃいますよ」

「え?」


声に振り返れば其処に居たのは先程の女だった。

ワインレッドの瞳が労わるように一瞬だけ此方を見る。

女は此方の反応を待たずに不二子の肩を掴んでいた男の手を見事に払い除けて不二子に微笑む。


「さぁ、パーティーを楽しんで。お綺麗な方」


そう言うと彼女の横からウェイターらしき男が現れる。

どうやら此方に気付いて助け舟を出してくれたらしい。

それを見て男が舌打ちしながら女とウェイターを睨む。


「おい、私の話し相手を何処へ連れて行くんだ?折角のパーティーで騒ぎを起こすつもりか、お前達は」


(どっちがよ!!)


不二子が思わず喉元まで出かかった言葉を飲み込むのと女が不二子と男の間に割り入ったのは同時だった。


「あまり騒がない方が良いと思いますけどね。御自身の為にも」

「何だと?どう言う意味だ!」

「そのままの意味ですよ」


そう言って微笑む女は甘い毒のような笑顔で氷のように冷たく囁く。

その瞳を見た男が当てられたように一歩引く。

無様に見えるそれをただ微笑んで見ながら、女は言葉を続ける。


「素敵なパーティーを」


ただの挨拶のような一言の冷たさに男は居竦む。

女は男の反応を見る事もなく不二子を連れてその場を離れるのだった。




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