とある薬師の受難
□薬師の国
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私は海賊と言う物が大嫌いだ。
奴等は奪うだけ奪って還元する事は無い。
様々なサイクルから外れた者なのだ。
だから嫌いだ。大嫌い。
、、、大嫌いだった、筈なのに。
【とある薬師の受難〜薬師の国〜】
此処は薬師の国、ミスティア。
学都でもあるこの街はとても活気に溢れて居る。
とは言え、狼藉を働く者はあまりいない。
何故なら、この街は『海賊白ひげ』の庇護の下にあるからだ。
薬師の国、と言ってもこの国がそう呼ばれ出したのは十数年前の事である。
世界中で大流行した流行り病の特効薬をこの国の薬師達が作り上げた事でこの国は薬師の国として広く知られる事になった。
と言っても、元々致死性の高い風土病が多いこの国では薬の調合技術は殆ど必須技能なのだけれど。
まぁ、あくまでもそれは過去の話。
今は多くの医院や薬剤師、学者達がこの国集まって居るので風土病で命を落とす患者は少ない。
少ないだけであって確実に患者は居るのだが。
長く国に住む事で抗体を持ち、罹患しない者も居れば移民だったり旅人だったり、患者は一定数いた。
(、、、嗚呼、今日も雨だなぁ、、、また患者が増えないと良いけど、、、)
少しだけ感傷的になっている自分を諌めつつ薬の並んだ棚を探っていると背後から可愛らしい声がした。
「センセー、今日こそは美味しい薬にしてね!」
「おやまぁ、私の薬は美味しい方だと思うけれど」
「こ、こら!ティナ先生になんて事を、、、!!すみません、先生!!」
良く言って聞かせますから、と慌て出す母に睨まれて泣きそうになる幼い女の子。
彼女もこの国の風土病に罹っている。
だが、彼女の病は薬の原料が少々高額と言う事もあって本来であれば治療を受けられる状態ではなかった。
移民である彼女達は裕福な生活をしているとは言えなかったからだ。
最初から抗体を打っていれば罹患する事もないのだが、そもそも抗体が高額なのでどうしようもない。
それでもその高額な抗体を打たなければ完全に治癒する事もないのが厄介な所だった。
じわりじわりと悪化していく娘を助けてくれ、と母が訪ねて来たのは一ヶ月程前だろうか。
当初は体力が低下し過ぎて居て抗体を打つ事も出来なかったが、今はキチンと生活出来る程に回復して来ている。
(うん、検査の結果も問題なし、、、)
頃合だな、と考えていると助手であるメアリーが笑った。