君の知らない物語
□序章〜05〜
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【ナナシside】
―――ペルソナがルベリアに来てから暫く経った。
記憶がないと言う彼女は最初こそ何度か困った様子を見せていたが、ルベリアの面々にも慣れてきたらしく、自分から話し掛けたり女達に混じって料理をしたり、男達と混じって修行をしたり、と溶け込んで居た。
最初の頃はアズリアや自分以外とは積極的に話そうとしていなかったので、本当に慣れて来たのだろう。
それが嬉しくもあり、何となく面白くもない。
(ま、あんな美人に頼られたら浮かれるのもしゃーないわな)
勿論、慣れてくれた方が嬉しいのだが。
(んー、でもまだ遠慮しとる感じあるなぁ、、、まぁ自分でも素性が解らん状態で誰とも仲良くってのは難しいのかもしれんか)
一応、彼女の事について周辺で情報収集はしていたのだが、殆ど情報は集まっていなかった。
どうしたものか、と部下と共にギルドに戻ると女達と話している彼女を見付けた。
「ペルソナちゃんはボスの事どう思う?」
「ナナシ?そうだなぁ、、、うーん、、、んー、、、強い人?」
「あらあら、ボスってばフラレそうね」
誰がフラレそうや!と、心の中でツッコミつつ耳を欹てると彼女の笑い声が聞こえる。
女達も楽しげに笑っていて、和気藹々とした空気が流れていた。
「でも、ボスはペルソナちゃんの事を好きだと思うんだけど」
「そうよね、扱いが違うもの。あれって無意識かしらね」
「、、、言ってる意味が解らないけど、多分それは客分だからじゃない?」
彼女は首を傾げながら言う。
本当にそう思っているように聞こえる彼女の言葉に何故か衝撃を受けている自分が居て、ふと此処暫くの行動を反芻してみる。
(、、、あー、確かに特別扱いかも、な)
何故かは解らないが、彼女の事を軽く扱う事が出来無い。
甘い言葉を吐くよりも先に彼女が安心出来るようにしてやりたくなるのだ。
彼女が何か困っていれば何を言うよりも先に手を貸してやりたくなるし、彼女が笑っていれば例え其処に自分が居なくとも安堵している。