君の知らない物語
□序章〜03〜
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【ペルソナside】
―――困った事になった。
私にはアズリア達と出会う前の記憶が朧げにしか存在していなかった。
思い出そうとすればする程に混乱して行く様な気さえする。
取り敢えず一般常識程度の事を教えて貰いながら何とか記憶を整理している。
アズリア達を助けてくれたから、と私はルベリアへと身を寄せる許可を貰い、立場的に彼らのギルドの客分のような形になっている。
そのおかげでルベリアの人々は私に好意的であり、無知な私にも親切に様々な事を教えてくれていた。
自分の事が解らない為に色々な事を試して解ったのは、私はそれなりの使い手だった、、、のかもしれない、と言う事だった。
少なくともそれなりの実戦を経験しているのだろう、と言うのがルベリアの面々の言葉だ。
弓の扱いは一般人では有り得ないし、狩人にしては魔力を練るのが上手すぎるらしい。
しかし、私の荷物にはARMはなかった。
その事でルベリアの面々からは『追い剥ぎにでもあったのだろう』と言う事で多少過保護な程に甲斐甲斐しく面倒を見てもらって居た。
盗賊ギルド、と言われても嫌悪感や拒絶反応は自分の中に無かったので、あまり深くは考えて居なかった。
正直、それがどう言う事なのかはイマイチ解っては居なかった。
、、、先程までは。
(うーん、盗賊ギルド、か)
目の前で嬉しそうに、楽しそうに、誇らしげに盗品に付いて語り合う男達。
別にそれだけならば、ただの逗留者である私には然程関係ないのだが。
「どうだ、アンタにはこれが良いと思うんだが」
「いやいや、こんな別嬪さんにそのARMはねぇだろ!!此方だ此方!!」
「それを言うならお前、お嬢ちゃんの好み合わせるのが一番なんじゃねぇのか?」
(いや、盗品は要りません)
心の中で即座に切り返す。
しかし完全に好意で差し出される品々と笑顔の前では言葉にはならなかった。
「、、、その、私、ARMって良く解らなくって」
嘘ではない。
嘘ではないが、彼らは全く納得していない。
「けど、あんだけ魔力を練り上げられるんだ。きっと記憶を無くす前はさぞや珍しいARMを持っていたに違いない」
「魔力を練れる事と珍しさって比例しますかね?」
鍛錬すれば魔力を練るだけなら出来なくはないのでは、と問うと彼らは頷きつつも苦笑して返した。