君の知らない物語
□序章〜01〜
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彼と最後に交わした言葉は、何気ない物だった。
『次の戦いで最後になるなぁ、、、お前は戦い終わったらどないするんや?』
『貴方と一緒に居るとは思うけど、他は特に予定は立ててないかな』
組織として成り立たなくなるだろうし、と付け加える前に彼は唐突に蹲る。
どうした、と声を掛ける前に返されたのは心底困ったような声。
『お前はホンマ、、、可愛すぎて早いトコ手ェ出さんとアカン気がするわ、、、』
出す気も無い癖に、なんて笑った私に苦笑を返した彼と一緒に、私は友を迎えに行った。
―――そして、戦友と共に向かった最後の戦いの最中、彼は姿を消した。
【序章】
―――盗賊ギルド・ルベリア。
「お母さーん、今日ボス達帰って来るんでしょ?」
「えぇ、宴の準備でもして待ってようかねぇ」
そう言って微笑む母にまだ幼い少女も微笑む。
父はボスと一緒に仕事に行っていたので、ボスが戻って来ると言う事は父もまた戻って来るのだ。
暫く不在だった事もあって少女は喜びを抑え切れないまま母に言う。
「じゃあじゃあ、私、木の実取ってくる!!」
「大丈夫よ、昨日の内に採ってきたもの。それより、今は魔物がざわついているらしいから一人で外に出ちゃ駄目よ、、、アズリア?」
「解ったわ!!」
言いながら走り出す少女を見て、あの子ったら、と苦笑する母。
とても穏やかな雰囲気を遠くから見守っていた少年が「仕方ないなぁ」と武器を片手にその後を追うのだった。
「アズリア!一人で出ちゃダメだってば!!」
「あ、ニールも来たのね!!良いわ、連れて行ってあげる!!」
「、、、いや俺が、、、まぁ、いいや。ほら行くぞ」
歩き出す少年を追う少女だったが、木の実のなっている林に辿り着く前に足を止めてしまう。
何だ、と足を止めた少年が見たのは見覚えの無い女だった。
少女は女に駆け寄ると心配そうに覗き込む。女は気付いているのか居ないのか、目を閉じたまま動かない。
「ニール、この人怪我してるわ!!」
「お、お姉さん大丈夫?うわっ、火傷に切り傷に、、、それに彼方此方打ち付けてるみたいだ。まるで戦争の後みたいだな、、、」