Persona〜The first strategy〜

□episode・09
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「ありがとう、助かったわ」


にこりと微笑んで礼を言うと女は上品に微笑んで応える。


「どういたしまして、素敵なお嬢さん」

「ふふ、貴女も素敵よ。あたしは不二子。貴女のお名前は?」

「素敵な名前ですね。私は神無です」


(あら、随分と、、、イメージが違うわね)


彼女の外見はどちらかと言えば厳しめの美人、クールな性格に見えた。

だからこそ助け舟を出してくれた事にも、直接庇ってくれた事にも驚いたのだが、随分とフランクな様子だ。


(、、、いえ、フランクも何か違うわね)


スマートに男をあしらいながら不二子を庇って、更に名乗りに対してすかさず褒め言葉を入れて来る。

言葉遣いは丁寧で、けれど威圧感を持って接する事も出来る。


(何かしら、この感じ、、、)


言い表せない物に一瞬沈黙してしまう。

すると彼女は気遣わしげな視線を向けて来た。

同性であればこそ気付ける程度の物だ。周囲の人間は気付かずに過ぎ去るそれにふと気付く。

彼女は何とか自分の気分を浮上させようと微笑んで居るのだ。


「、、、優しいのね」


どこかしみじみした声が出てしまい、しまった、と思っていると彼女は笑う。

先程とは少し違う、心底安堵したような少し幼さの見える笑顔を見せた。


「いいえ、もっと早く気付ければ良かったのですが、、、お怪我はありませんか?」

「えぇ。貴女のおかげでね」


安堵させるように明るく言うと神無はとろけそうな笑顔を見せる。

先程の立ち居振る舞いからは想像出来無いそれに面食らって居ると彼女は何かに気付いたように振り返る。


「ごめんなさい、連れの所に戻らなければ。不二子さん、どうぞパーティーを楽しんで」

「貴女もね」


そう言うと彼女も頷く。

去って行く後ろ姿からは優しさよりも妖艶さが見えて、五エ門の言葉が脳裏を過ぎった。


―――『相応しくないと、そう思わせる魅力があった』


(、、、確かに、近付き難い雰囲気もあるわね。それに、優しさも)


彼女の立場を知らないにも関わらず、裏の人間である自分が関わってはいけないような、そんな気にさせる程の優しさ。

裏表、と言う訳でもなさそうなので、器の大きな人なのだろうと思う。

それこそ、組織の上に立つような。


「、、、風にでも当たった方が良さそうね」


ポツリと独りごちる。

本格的に仕事が始まる前に思考を切り替えなくては、と不二子は一人その場から離れるのだった。




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