Persona〜The first strategy〜

□episode・08
1ページ/2ページ


―――不二子にとっての今夜の目的は二つ。

一つは仕事。

各国の外交のお偉方が集まるパーティーの会場になっているこの屋敷から美術品を盗み出す事。

もう一つは個人的な興味だった。


「五エ門、どう?見付かったぁ?」


パーティーの参加者に混ざりながら不二子はインカム越しに五エ門に声を掛ける。

今日のパーティーに“ヴァレンティーノ”の人間が来ると聞いて居たので何となく五エ門の想い人を見てみたかっただけなのだが、返って来たのは重苦しい肯定の言葉だった。


『、、、あぁ。見付けた』

「えっ、本当に居たの!?何処、どんな女!?」


そう言いながら不二子は思わず周囲を見渡してしまう。

華美な服装の女は多く居たが、五エ門の言っていた“相手に自分が相応しくないと思わせる”程の美女はいない。


(眼鏡違いかしらね?)


期待し過ぎただろうか、と彷徨わせていた視線を止める。

暫しの間を置いてからインカム越しに五エ門が唸るように言う。


『紅い髪に紅い瞳の人だ。、、、見れば直ぐに解るだろう』

「紅い髪、、、見当たらないわね。ちょっと会場の方に来なさいよアンタ」


あたしも見てみたいのよ、と不二子が言うと五エ門は『見れば解る』と繰り返す。


「あのねぇ、見れば解るって言っても限度があるわよ」


アンタしか見てないんだからね、と再度視線を彷徨わせながら不二子は言う。

五エ門の返事はまたしても微妙な間を開けて返される。


『、、、紅い綺麗なドレスで、、、ルパン達と来ているようだった』

「、、、はぁ?なぁに、どう言う事?あたしが手伝ってって言ったら忙しいって、、、もしかしてそう言う事?」


仕事が被ったか、と警戒したのと視界にワインレッドのドレスに身を包んだ女が飛び込んで来たのは同時だった。

まさか、と思うと同時に納得する。

嗚呼、彼女なのだろう、と。


(、、、確かに美人)


心の中で呟く。

ワインレッドのドレスは過度に華美なデザインではないが、着る者は選ぶだろう。

ドレスと言うのは着飾れば着飾る程に浮いてしまう物なのだ。

けれど、彼女にはそれが似合う。

ドレスの美しさに負けない美しさがあった。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ