蒼穹を仰ぎて

□黒衣の追想
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【黒衣の追想】



追い出された二人は近くに止めておいたパトカーに乗り込む。

どちらともなく無言のまま。

沖田の運転で車が走り出して、それからポツリと沖田が言う。


「あのお嬢様、覚えがありまさぁ」


「だろうな。俺もある」


「“あの後”、会った事あるんですかぃ?」


「ある訳ねぇだろ。聞いた事があるだけで顔を見たのは今日が初めてだ」


そう言って土方は胸ポケットから煙草を取り出すと火を付ける。

一度吸い込んで、煙を吐き出すのを合図にするように沖田が言う。


「なら、俺等の勘違いかもしれねぇ。“あの時”は顔なんぞ見れなかったんですから。まぁどっちにしろ、下手な手出しはしねぇ方が懸命そうでさぁ。旦那が居れば大丈夫でしょう」


「、、、どうだかな」


土方は静かに言う。

沖田はその言葉を知っていたかのように素知らぬ顔で返した。


「もしも“青鳥”だとしても、一般市民には手を出さねぇ筈だ。あのお嬢様だってんなら尚更」


「、、、様子だけは伺っとくべきだな」


近藤さんもそのつもりだろ、と土方が言うのと、無線が入ったのは同時だった。


『トシ!!総悟!!お前ら何処に居る!!』


「近藤さんか。アンタが言ったんだろ、万事屋の様子を見ておけって」


『そりゃそうだが、俺はてっきり山崎にでも頼むんだと、、、と言うか、お妙さんがあのお嬢さんの事を酷く気にしていたから護衛を頼んだんだが』


今日もお妙さんは〜と語り出した近藤に土方が無線機を壊す勢いで苛立ちを覚えつつ問う。


「もしかしてアンタそれだけか?」


『それだけ?あぁ、それだけだぞ?様子を見ていたんだが、どうも記憶喪失らしくてな』


「、、、記憶喪失?」


「、、、あの、お嬢様が、ですかぃ?」


思い返すお嬢様は痛々しい怪我こそしていたがそんな素振りは見せなかった。

しかし近藤は無線の向こうで何も気付かずに言う。
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