君の知らない物語

□第三章〜07〜
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【ナナシside】


宴の席で彼女の様子がおかしい、と思った。

ベッドに入ってからも一向に消えはしない違和感に焦れて何故おかしいと思ったのかを考えていた。

瞼を閉じて浮かぶのはいつもよりも少しだけ距離のあるような笑顔で。


(、、、怪我しとった、、、?)


彼女はとても強い。

心も体も。

そして、とても賢い。

手負いの獣のように怪我を悟らせる事はしないだろう。

だが、何となくそう思う。

いつもよりも遠い距離。

少しだけ余裕のない様子。

そしてなにより、自分が近付かない、と言う事に対して安堵していた彼女の反応を思い返して疑惑が確信に変わる。


(、、、明日もウォーゲームや。出るつもりで隠しとったんやろうな)


そう考えれば彼女の行動もある程度は理解出来る。

しかし、解らない事がある。

何故、怪我をしたのか、どの程度の物なのか、と言う尤も重要な部分が解らない。


(、、、チェス、か)


自分の中にも“もしかしたら”と言う考えがない訳ではない。

もしも、彼女がチェスであったとして。

メルとして戦っている彼女はとても危険な立場にあるのではないだろうか。

もしもスノウ姫のように“狙われる”立場だった場合も同じだ。

暫しぐるぐると考えてふっと一つの結論に至る。


(、、、守るだけや。自分が、あの子を)


例えどんな立場であったとしても、それだけは変わらない。

そう考え至ると不思議な程に心が凪ぐ。


(、、、なんにせよ、明日は注意しとかな、、、アカンな)


心の中で決意して、瞼を閉じる。

思い返す笑顔はいつもの優しい物だった。



【To be continued】
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